国内有数の別荘地・那須高原を抱える栃木県那須町は、東京電力福島第1原発事故に伴い町内約2万戸の住宅除染を計画したが、実施済みは2割弱の3361戸(今月4日現在)にとどまっている。北海道から沖縄まで全国に散らばる別荘所有者と連絡が取れず、同意が得られないことが大きく影響している。別荘が建ち並ぶ丘陵地では、未除染の土地から雨水などが斜面を流れ下るため、地元住民は「何とかしてほしい」と悲鳴を上げている。
福島県境に位置する那須町は、住宅の半数以上が別荘というリゾート地で、放射性物質の除染対象となる「汚染状況重点調査地域」に指定された。住宅除染は所有者からの同意取得を前提としており、町は昨年1月以降、調査同意書と除染同意書の2通を順次郵送してきた。
しかし、同意したのは約1万1000戸だけ。「別荘をほとんど利用していない」などを理由に同意しない所有者がいるほか、約3600戸分については同意書に回答さえないという。督促通知を送っても大半は返事がなく、そのほとんどは別荘とみられるという。
町によると、所有者が登記簿上の住所から引っ越し、同意の依頼状が送り返されてくることが多い。所有権を受け継いだ親族らが管理を投げ出し、建物が朽ち果てているケースも少なくないという。このため、一定範囲をくまなく除染する「面的除染」が進まず「虫食い状態」に。町の担当者は「別荘の所有者は定住している一般住民と比べて、放射線量や除染への関心が低いかもしれない」と打ち明ける。
放射性物質汚染対処特別措置法の規定では、所有者が所在不明の場合、公報への掲載など所定の手続きを踏めば合意があったと見なすことができる。しかし、除去した表土は、それぞれの敷地内で遮水シートで覆い、仮置き保管してもらっているのが実情。担当者は「持ち主の同意がなければ何も進められない」と嘆く。
町は2012年4月につくった除染実施計画(第1版)で、14年3月と定めていた住宅除染の完了時期を17年3月に延ばした。地元住民の三楠紀子さん(69)は「隣接する斜面の上の別荘は沖縄など他県の人の所有で、資産価値が下がったからか放置されて連絡さえ取れない。雨が降れば水が流れ込んできて除染しても意味がない。孫も遊びに来てくれなくなってしまった」と弱り顔で話した。
http://mainichi.jp/select/news/20141107k0000m040065000c.html
毎日新聞 2014年11月06日
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