2015/02/04

福島の悲しみ 忘れてないか 倉本聰さんの劇 きょうから東京公演

2015年2月4日 東京新聞夕刊より
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015020402000247.html


 脚本家の倉本聰(そう)さん(80)=北海道富良野市=が、東日本大震災と原発事故をテーマにした演劇を、全国で巡回公演している。震災から4年近くたち、人々から被災地や脱原発への思いが薄れたという危機感がある。4日に始まる東京公演を前に、倉本さんは「東京の人たちに、原発事故を忘れてないとは言わせたくない。風化に一石を投じたい」と訴える。 
 「ノクターン-夜想曲」と題した演劇は、東日本大震災から数年後の福島が舞台。原発事故で住人が避難した民家で、いずれも近親者を失った男女が、自分の行動への後悔やふるさとを奪われたやるせなさを語る。物語は一億年後の海底で終わる。原発から生まれる放射能が、遠い未来まで残ることの暗喩だ。
 倉本さんは「核のごみを捨てる場所がないまま再稼働をすることは、未来というごみ箱に捨てることと同じ」と語る。だが、原発を直接批判する表現はほとんど使わなかった。原発から逃げた労働者が自らを責める姿などを通じて、理不尽さを浮かび上がらせた。
 倉本さんにとって、震災を題材にした初の演劇。震災直後から脚本を書こうと思い立ったが、執筆には時間がかかった。どんな言葉を選べば、ふるさとを失った人たちが傷つかないか。病院から避難した看護師に取材し、福島第一原発を見学した。脚本を八回書き直し、上演後もせりふを細かく修正してきた。
 首都圏では震災直後の節電ムードが薄れ、政治家は原発の再稼働を進めようとしている。「こんなにも早く事故の記憶が風化してしまうのか、と驚き、怒っている」と倉本さん。「ふるさとが放射能で汚染され、帰りたくても帰れない人たちがまだ福島にいる。寄り添うというのは、相手がどれだけつらいのかを想像すること。私たちは寄り添い続けるべきだ」と語る。
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 全国公演は一月二十一日に北海道で始まった。東京公演は二月四~八日、渋谷区の新国立劇場小劇場で。問い合わせはサンライズプロモーション東京=電0570(00)3337=へ。

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