2014/09/20

日本医師会総合政策研究機構・日本学術会議共催シンポジウム 共同座長取りまとめ (2014年2月)


平成 26 年 2 月 22 日

東京電力福島第一原子力発電所事故後の健康管理に関して、日本学術会議は、
東日本大震災復興支援委員会放射能対策分科会による提言「放射能対策の新たな
一歩を踏み出すために-事実の科学的探索に基づく行動を-」において、住民健
診・検診の継続実施体制の整備や医療体制の整備について、2012年4月に提
言した。

一方、日本医師会は、日医総研ワーキングペーパー「福島県『県民健康管理調
査』は国が主体の全国的な“健康支援”推進に転換を」、2013年4月に発表
するなど、健康支援について積極的に発言してきた。

2013年10月に環境省に設置された「東京電力福島第一原子力発電所事故
に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」においては、日本医師会常
任理事及び日本学術会議副会長が専門家として参画している。

日本を代表する2つの学術専門団体が、こうした各々の取り組みを踏まえ、さ
らに連携を深め協力して国民への健康支援をはじめとする、東京電力福島第一原
発発災後の対処のあり方について議論を深めるために、平成 26 年 2 月 22 日共催シンポジウムを開催した。

共催シンポジウムにおける、各講演の内容及びパネルディスカッションでの意
見を踏まえ、以下の6点を「共同座長取りまとめ」とした。


1.国・福島県・東電、そして専門家・科学者は健康支援対策への信頼の回復を

被災者は福島県だけでなく、隣接県を超え全国に広がっているが、被災者に対
する国・県の健康支援は不十分であるとの声もある。それらの声に耳を傾け、不
安の持たれている健康影響については、検査の意味を丁寧に伝えたうえで、十分
な検査や調査を行い、その情報を国民に明らかにすることが重要である。健康支
援策の具体的内容も重要であり、その拡充と意義の説明によって信頼が回復され、安定した生活感覚を取り戻すことができる。
医師・保健師など専門家また科学者においても、解り易い合意に基づく助言を
目指し、意見の相違が存在する時は解り易く説明する責務を持つ。

2.東京電力福島第一原子力発電所事故の影響の科学的解明を

事故後、政府、国会、民間の事故調査報告書が公表され、事故当時の状況が明
らかにされてきた。しかしながら、これらは限定されたデータを基に作成された
という限界も否めない。
一連の報告以降に、事故直後の周辺地域でのモニタリングデータや、ヨウ素の
地表沈着量の推計値などが新たに公開されており、これらのデータに基づく初期
1被ばくの再評価を含め、事故後に蓄積されてきたデータや知見をもとに、事故の影響の一層の科学的解明を図るべきである 。

3.国・福島県・東電は生活再建の総合的な環境対策と地域づくりの支援を

時間の経過による放射能の物理的減衰・自然減衰と除染の効果によって、放射
線量が一定レベル以下に低下した地域については、避難指示の解除が検討されて
いるが、帰還の選択をするか否かは個人の選択を尊重すべきであり、また、選択
が可能な条件整備が必要である。
避難指示による避難や自主的避難が長期化した中では、放射線に対する不安だ
けでなく、個々人の生活再建、コミュニティの復活、地域復興に係る課題にも総
合的な対処が必要であり、国・福島県・東電・専門家・科学者は住民の不安に応
えるための対話などを通じて、地域づくりの基礎となる信頼関係の再構築をすべ
きである。

4.国の健康支援システム・汎用性のあるデータベースの構築を

県域を越えた被災者や、廃炉作業員・除染作業員等も対象とした国の健康支援
システムの構築と、さらに様々な健診データ等のデータベースを、被災者・廃炉
作業員・除染作業員等の健康支援のために広く共有できる、例えば(仮)日医健
診標準フォーマットのような汎用性を具備したデータベースを、構築すべきであ
る。

5.住民や作業員への健康支援・人的資源育成等のためのナショナルセンター整
備を

被災した住民や廃炉作業員の健康支援や、放射線汚染環境情報の集積、さらに
は緊急被ばく医療体制を整えるための人的資源育成等の、中心的機能を担うナシ
ョナルセンターを、いわき市における誘致要望にも留意し、設置すべきである。

6.健康権の概念を尊重し長期的かつ幅広い視点からの健康支援体制の構築を

経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第 12 条第 1 項において、「全ての者が到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利を有すること」、いわゆる「健康権」が認められている。
健康権の概念に照らした、全国に散在する被災者を含め長期的かつ幅広い視点
からの健康支援が必要である。
命の視点、倫理的視点に立ち、原発サイトや除染で働く作業員の、労働作業環
境の管理、健康管理・健康支援、緊急被ばく医療体制の整備、関係者の知識共有
と理解、そして住民参加による政策やシステムづくりが必要である。

http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf2/h-140222.pdf


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