2015/09/15

海へ地下水 「漁業者は皆、反対だろう」/福島

2015年09月15日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/local/fukushima/news/20150914-OYTNT50119.html

放射性物質で汚染された地下水は、浄化処理を経て海に流された。東京電力は14日、福島第一原発の原子炉建屋周辺の井戸「サブドレン」からくみ上げた後、浄化処理していた地下水の海洋放出を始めた。国と東電が汚染水対策の柱の一つと位置づける作業が同日、報道陣に公開された。

地下水は、処理後に貯蔵されていたタンクから約1・5キロ・メートルの配管を進み、外洋とは区切られた原発の港湾内に流される。直径約15センチの排水管の出口は海中にあり、放出をうかがわせるのは海面のわずかな揺らぎだけだった。東電の担当者によると、排水量は毎分2トン。排水音が他の作業の邪魔にならないよう、排水口を水面下にしたという。

くみ上げは、地下水の水位を下げて建屋内に流入する量を減らし、新たに汚染水が発生するのを抑制する狙いがあり、定期的な放出は不可欠だ。この日は昨年、試験的にくみ上げた約4000トンのうちの838トンを流した。排水からはセシウムやストロンチウムは検出されず、トリチウムの濃度は東電の基準の1リットルあたり1500ベクレルを下回る430~460ベクレルだった。

護岸での「海側遮水壁」の建設工事も公開された。完全に閉じると地下水があふれだす恐れがあるため約10メートルを開いたままにしていたが、半分程度は既に鋼管製の矢板(直径1・1メートル、長さ30メートル)が打ち込まれていた。完成すれば港湾に流出する放射性物質を最大40分の1に減らせるという。

漁業者らは風評被害を恐れる心境を吐露した。

いわき市漁協に所属する新妻竹彦さん(54)は「放出基準が守られるなら、海の水質改善という点では無茶な話ではないが、消費者の反応を考えると心配」と話した。別の男性組合員(68)は「漁業者は皆、反対だろう。消費者が遠ざかる。自分の子供も県沖の魚を食べない」と明かした。ウニやアワビを取る男性(52)は海に潜ると口に海水が入るとして「国や東電に『流している水は飲めますか』と聞きたい」と語気を強めた。

浪江町の70歳代の漁師は「東電は何度も汚染された雨水を海に漏らしている。信用できない」と憤りを隠さない。東日本大震災で失った船を仲間と共同で新造した相馬市の漁師(59)は「処理された水でも海に流せば風評被害が出るだろう。いつになったら震災前と同じような漁に出られるか。船を新しく造ったのは失敗だったかもしれない」と沈痛な表情を見せた。

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