2015/09/25

ルポ・福島:南相馬・小高区川房地区 住民依頼で線量調査 多くの地点、国の目標超えか 戻るなら再除染を/福島

2015年09月25日 毎日新聞
http://mainichi.jp/area/fukushima/news/20150925ddlk07040254000c.html
木が生い茂る住宅の裏側では除染後も比較的高い放射線量が計測された
住宅の屋根から雨が落ちる場所では除染をしても局所的に線量が下がらず、
ピンクのリボンで印をつけていた=いずれも南相馬市小高区川房地区で
福島第1原発から20キロ圏内に位置する南相馬市小高区川房(かわぶさ)地区は国の居住制限区域(年間積算放射線量20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下)に指定され、除染がほぼ終了した今も放射線量が比較的高い地域だ。連休最終日の23日、京都大原子炉実験所の今中哲二助教らのグループが住民の依頼で川房地区の線量調査を行った。南相馬市は帰還困難区域(同50ミリシーベルト超)の西側山間部などを除き、市内の避難指示を来年4月に解除する方向で国と調整を進めているが、住民の不安は強い。【大塚卓也】

この日、住民は川房四ツ栗の元梨農家、横田芳朝さん(70)の自宅に集まった。前を通る県道は約250メートル南側が帰還困難区域に指定された浪江町との境で、その先は通行できない。「本来なら(収穫期の)今が一番忙しくて、うれしい時期なのにね」。横田さんは久しぶりに会う住民一人一人と言葉を交わし、健康状態を気遣った。

小高区では8月末から避難指示解除に向けた「準備宿泊」が始まったが、集まった十数人の住民は全員避難先からの参加。横田さんも妻裕子さん(67)や長男家族と埼玉県で暮らす。前日夜から夫婦2人で市内のホテルに宿泊し、自宅には朝戻ったという。

対象は川房地区の住宅全72戸で、今中助教らが三つのグループに分かれ、住民の案内で玄関先、庭、家の裏側の3カ所を地面から1メートルの高さで計測して回った。2014年1月から始まった国の除染から1年以上経過している家も多い。

「ここの家は住民の同意が遅れ、まだ除染が終わっていません」。腰の高さを越える雑草や無数のクモの巣が行く手を遮る住宅の裏庭で、地区除染委員の飯崎忠雄さん(72)が説明する。今中助教が線量計で数値を測ると、「毎時4・60マイクロシーベルト」(年間約40ミリシーベルト)を示した。

常磐自動車道の防音壁の西側に隣接する住宅は、2011年の震災直前に完成したばかり。除染で庭の雑草はきれいに刈り取られていたが、線量は毎時1・3マイクロシーベルトだった。「庭に敷き詰められたアスファルトのすき間に放射性物質が入り込んでしまったため、除染の効果が出ないのだろう」と今中助教が推測した。

記者が同行した30戸の調査結果は、玄関前が毎時0・41〜2・60マイクロシーベルト、庭は0・43〜3・50、家の裏側が0・59〜4・60マイクロシーベルトだった。

国は長期的な目標として、年間追加被ばく線量を1ミリシーベルト以下にする方針を掲げる。今回の計測では、多くの地点で年間追加被ばく線量が1ミリシーベルトを超える可能性があるという。川房行政区の佐藤定男区長(59)によると、72戸のうち地元に戻る意思を示す世帯は1割以下といい、将来的に戻りたいと話す住民からは再除染を求める声が上がっている。

「除染が終わっていない家を除けば、想定内の数値。家の外に一日中いるわけではないので、即座に健康への影響が心配される状態ではない。自宅に戻るかどうかは住民自身の判断になる」。今中助教は調査終了後、記者の質問にそう答えた。

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