2015年9月11日 朝日新聞http://www.asahi.com/articles/DA3S11958760.html
「お孫さんに綿あめ、いかがですかぁー」。福島県広野町で8月8日に催された夏祭りで、地元の県立ふたば未来学園高校の山田瑞樹(みずき)さん(16)が声を張りあげていた。
「社会起業部」の部員たちで模擬店を出したのだ。原発事故の影響で住民がまだ半分しか戻らない町をもり立て「地域の人たちとふれ合う機会を作りたい」と企画した。ふわふわした形ができず、見かねた隣の出店の人が作り方を教えてくれた。
部ができたきっかけは、2月の入学試験だ。ふたば未来は、被災した福島県双葉郡の復興の担い手を育てるために設立された。そのため、作文と面接で「復興にかかわりたい」と訴える生徒が目立った。「自分たちで実現の場を作ってみては」。開校した4月、教諭の佐藤伸郎(のぶお)さん(41)が呼びかけた。
部員は現在9人。5月から、ずっと続けていることがある。学校周辺4カ所での放射線量の測定だ。手の空いている部員が受け持つ。数値は部のフェイスブックで公表している。
7月には町と連携し、生徒と町職員の50人分の、時間ごとの積算線量を行動内容とともに記録した。分析結果を町のイベントで近く発表する。「広野町の放射線を気にする人もいるが、被曝(ひばく)が健康影響を心配するレベルにないことを多くの人に知ってもらいたい」
そう話す浪江町出身の山田さんは事故後、新潟県燕市の小中学校に通った。祖母、父、姉の4人で乗り込んだ避難バスの行き先が、たまたま燕市だった。家には昼間、祖母しかおらず、姉が働き出した喫茶店に、出入りしていた。ブレンドの調合を当てるのが楽しくなり、中学時代は店めぐりが趣味になった。
卒業までに実現したい目標がある。校内に喫茶店を作ることだ。広野町に飲食店は数軒しかなく、「だったら自分たちでカフェを作ればいいじゃないか」と。放課後と休日にだけ店を開き、部員が店員を務める。
7月、校長宛てに企画書を出した。タイトルは「未来カフェの設置」。手始めに、11月にある学校の文化祭に出店しようと、準備を進めている。
(岡本進)
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