2015年9月2日 OurPlanet TV
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node%2F1974映像:8月31日開催の福島県「県民健康調査」検討委員会
福島県の小児甲状腺検査を実施している福島県立医大が、県民健康管理センターの中に設置している外部専門家会議に対し、県の「検討委員会」には公表していない手術症例などを報告していることがわかった。OurPlanetTVが情報公開で、議事概要を入手した。同会議には「検討委員会」からは姿を消した山下俊一副センター長や鈴木眞一教授も参加。「検討委員会」に甲状腺の臨床医が参加しなくなり空洞化する一方、同会議が実質的な甲状腺検査の審議の場となっていることが浮き彫りになった。
座長は山下俊一副センター長
今回、OurPlanetTVが入手したのは「甲状腺検査専門委員会・診断基準等検討部会」の議事概要。同検討部会は福島県立医大県民健康センター甲状腺専門家会議の下に置かれており、会議費用は国が支出している「福島県民健康管理基金」が充てられている。開示資料によると、甲状腺の専門家による外部委員21人と協力委員1人がメンバーだが、個人名は黒塗りだ。
当初は年に1回程度の開催で診断基準についての検討を行っていたが、現在では、「検討委員会」の前に開催されるようになり、「検討会」に提出する書類を事前に配付。内容の説明や確認を行っているほか、手術症例についても議論しており、甲状腺検査の方向性について実質的な議論をする場となっている。
例えば、2013年(平成25年年)1月3日に開催された第6回会合では、甲状腺検査の実施状況などを報告した上で、がん症例や低分化癌などについて検討。今年2月に開催された第7回会合では、県外における二次検査拠点の基準についてや、県内講習会などについて議論している。
会議で座長をつとめているのは、山下俊一副センター長。山下氏は、「秘密会」を開催しているなどの批判を受けて、2013年度末に、福島県民健康調査検討委員会の座長職を退任したが、現在も甲状腺検査のあり方を実質的に仕切っていることが浮き彫りになった。
手術データは県立医大のものか
現在、同検査によってみつかった甲状腺がんは100例以上にのぼり、「過剰診断」かどうかを判断するにあたって、「手術症例」の情報は欠かせない。そこで、県や検討委の委員は、県立医大に対し、情報を開示すべきだとしているが、県立医大は個人情報保護を理由に開示を拒んでいる。
福島県の県民健康調査課の小林弘幸課長は、同会議について、「存在は何となく知っているが、県立医大から正式に報告を聞いたことはない。議論の内容については、承知していない」としている。また、検討委員会の委員も、同会議の存在については知らないという。
一方、県立医大の阿部正文副理事長は「患者の手術適応がよいかどうかなど、手術基準も含めて、専門家同士が検討する場。そこの情報を検討委員会に出すのはふさわしくないと思う。」と述べた。現在、県が開示に向けてのルール作りをしている。
情報公開すればするほど、議事録が減ってしまう現実
福島県立医大については、情報公開するたびに、会議をなくしたり、議事録の内容を減らす等の問題がおきている。例えば2012年、OurPlanetTVが学内の最高意思決定機関だった「マネジメント会議」の議事録を開示請求した直後、医大は「マネジメント会議」そのものをを廃止した。その後、同会議と同じ性質の幹部会議は存在しなくなったと説明する。
また、同じくOurPlanetTVが、県立医大が、甲状腺検査に多額の損害賠償責任保険をかけたと報じた直後から、同検査について議論している「甲状腺専門会議」の議事概要の記載は数行程度に圧縮され、議論の内容がほとんど掲載されない状態になっている。
星北斗座長が、8月31日の会議の中で、「なし崩し的に始まった」と言及した検討委員会。土台を作った山下俊一氏が座長は、検討委員会の表舞台からは去ったものの、県立医大の裁量は相変わらず大きく、情報の透明性が確保されているとはいいがたい。例えば2次検査の際に採血された子どもたちの血液は、検体試料として、広島や長崎の放射線影響研究所に習って長期保存されている。これらには多額の予算がかかっており、それらはすべて国から支出された福島健康調査基金から充てられている。こうしたことから、2次検査以降も保健診療にせず、県民健康調査の枠内で実施するほうが合理的だとの声や県民健康調査そのものに倫理委員会が必要だとの声もあがっている。
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