調査のためヒメマスを捕獲する県の担当者=8月、福島県金山町の沼沢湖 |
東京電力福島第1原発事故で拡散された放射性物質による淡水魚汚染。風評被害払拭のため汚染メカニズムの把握が急務となる中、福島県や研究者らが現地調査に奔走している。メカニズムは未解明な部分も多いが、徐々に実態が判明しつつある。
淡水魚は海の魚に比べ、基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を超える割合が高く、下がり方も鈍いとされる。県によると、海の魚の基準値超えは2012年度に採取したうちの約13%だったのが、13年度で約2%と大きく減少した。だが、淡水魚は12年度で約17%、13年度で約10%にとどまっている。
淡水魚は体内の塩分を調節する過程で、カリウムなどをためやすく、化学的性質が近いとされる放射性セシウムを体内に取り込むと排出までに時間がかかるという。
福島県内水面水産試験場は2011~12年度、あらかじめ汚染されていない環境で育てたヤマメにセシウムを含む配合飼料やミミズを与える実験を実施した。食べた餌で汚染されることが分かり、養殖の場合は餌を適切に管理すれば汚染を防げることが明らかになった。
また、アユがセシウムを取り込む経路を調べるため、県内の川の3地点で水や川底の泥などを採取。泥のセシウム濃度が高いほど、そこにすむアユの汚染の度合いが高いことが判明した。餌と比べ、水からのセシウム取り込み量は少ないとされ、藻などを食べる際にセシウムが付着した細かな土の粒子も取り込んでいる可能性を指摘する研究もある。
福島大は今年8月、阿武隈川に生息する淡水魚の汚染をテーマにした研究を重点研究分野に指定した。県内水面水産試験場とともに、水質のモニタリングのほか、アユを放流して実際に川でセシウムをどれくらい取り込むかの調査を始めた。
福島県金山町の沼沢湖でも、県から採捕自粛が求められている特産のヒメマスを調査。今後の汚染状況の変化を予測することや、セシウムで淡水魚が汚染されるメカニズムの解明が期待される。
0 件のコメント:
コメントを投稿