http://mainichi.jp/articles/20160627/ddm/041/040/165000c
「ダブルスタンダード(二重基準)としか読めない」。東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た汚染土の再利用を巡り、管理期間を170年と試算しながらその可否について判断を先送りした環境省の非公開会合は、法令が定める二つの基準の整合性が議論の中心となった。議論を取り仕切る委員長からは「この会合はその(二重基準と言われない)準備のための理論武装と考えている」との発言も飛び出した。【日野行介】
原子炉等規制法は原発解体で生じる金属などの「安全に再利用できる基準」(クリアランスレベル)を放射性セシウム1キロ当たり100ベクレル以下と規定。一方、原発事故後に成立した放射性物質汚染対処特別措置法は8000ベクレル超を指定廃棄物とし、同ベクレル以下を「問題なく廃棄処理できる基準」と定めている。
「再利用のためには濃度基準は必要で、そのための目安は8000ベクレル。ただ、当面の考え方(クリアランスレベル)と整合を取っていて100ベクレルという努力目標がある。100ベクレルが義務ならダブルスタンダードになる」。2月24日に開かれた4回目の非公開会合で事務局役の日本原子力研究開発機構(JAEA)の担当者が説明した。議論をまとめた文書に対し、ある委員は「まだダブルスタンダードのように読める」と指摘。別のJAEA担当者が「(汚染土をコンクリートなどで覆う)管理の仕方とセットにすればダブルスタンダードではないと考える」とフォローした。
委員長の佐藤努北海道大学教授は「この会合はその準備のための理論武装と考えている」と発言。後の取材で「二重基準だと言われないためという趣旨か」と問うと、「はい、そうです」と認めた。
二重基準と指摘される恐れがありながら、環境省が非公開会合での議論を進めたのは、再利用の上限値を緩めなければ、最大で東京ドーム18個分とされる汚染土の最終処分量を減らせないためだ。汚染土は植物など異物を除去後、セシウムが小さい粒に付着しやすい特性を利用して、ふるい分けで濃度が低い大きい粒を集めて再利用される。これなら8000ベクレルで75%、3000ベクレルでも62%の再利用が可能だが、100ベクレルではほとんど再利用できないとの試算も非公開会合で示された。
非公開会合の上部組織「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」は昨年7月、環境省が土木や放射線の専門家ら11人を委員に設置。要綱で「ワーキンググループ(WG)を置くことができる」とし、「土木学会再生利用WG」などが設けられ、メンバーや議事録が公開されている。しかし、二重基準を議論した非公開会合「放射線影響安全性評価検討WG」は、当初その存在すら公表されなかった。
今年4月13日の参院東日本大震災復興・原子力問題特別委員会で丸川珠代環境相はようやく存在を認めたが、議事録などは「公にすれば誤解や混乱を生む可能性がある」と公開を拒否。2月16日の非公開会合で佐藤委員長は「親委員会である戦略検討会へのWGの結論の出し方も考えなくてはならない」と発言、環境省の担当者も「検討会は公開の議論なので出し方に注意が必要」と応じ、保秘の姿勢を強く示していた。
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