甲状腺検査「維持」が大勢 県民健康調査委、今後の在り方議論
2016年9月15日 福島民報http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2016/09/post_14192.html
県民健康調査検討委員会は14日、福島市で開かれ、東京電力福島第一原発事故の健康影響を調べる子どもの甲状腺検査の今後の在り方について、現在の規模を維持して継続すべきとの意見が大勢を占めた。検査結果のより詳細な分析などを踏まえて検査の枠組みの検討を続ける。子どもの健康管理に影響するだけに議論の行方が注目される。
チェルノブイリ原発事故の場合、子どもの甲状腺がんの診断が事故発生から5年後以降に増えているデータを踏まえ、医師会、大学、研究機関の関係者で構成する委員から「少なくとも10年間は縮小すべきではない」と検査の規模を維持し、経過を注意深く分析するよう求める意見が相次いだ。
長期間にわたる見守りの必要性も指摘された。放射線被ばくと甲状腺がんの関連を明らかにする当初の検査目的を踏まえ、「検査のデータの蓄積が中途半端になり、信頼度が低下するのは避けなければならない」として継続してデータを積み重ねる重要性を訴える声もあった。
検査体制の改善を求める提言も多かった。東京電力福島第一原発事故当時に18歳以下だった県民が進学や就職などで県外に転出している状況を考慮し、「県外での受診希望者に対応する検査機関などを拡充するよう検討すべき」との指摘もあった。子どもたちの心身の負担や不安の軽減に向け、手術でなく経過観察でよい場合などの適切な助言や心理的なケアの充実を求める声も上がった。
星北斗座長(県医師会副会長)は会議後の記者会見で、「無理やり検査を受けさせたり、検査を希望する人から機会を奪ったりする考えはない」とし、さまざまな要望を踏まえながら議論を深める考えを明らかにした。委員会は今後、専門部会による2巡目、3巡目の本格検査の分析結果などを基に検査の在り方を協議し、方針を固める見通し。
検査の実施体制を巡る論議の背景にはチェルノブイリ原発事故後の状況を顧み、体制を維持すべきとの見解の一方で、一部の医療関係者から、必ずしも治療の必要がないがんを見つける「過剰診断」につながっているのではないかとの懸念の声がある。県小児科医会は8月、原発事故から5年がたち、「がん」または「がんの疑い」とされた子どもが複数確認された点に触れ、県民が不安を感じていると指摘。国内外での風評につながる可能性もあることから事業の見直しを含む再検討を県に求めた。甲状腺がんと診断された患者の家族でつくる「3・11甲状腺がん家族の会」は同月、対象年齢の拡大や受診しやすい環境の整備などを県に要望した。
※甲状腺検査 東京電力福島第一原発事故の影響を調べるため、県による県民健康調査の一環で平成23年10月に始まった。1巡目の先行検査は原発事故当時、18歳以下だった約37万人が対象で、2巡目以降の本格検査は事故後1年間に生まれた子どもを加えた約38万人が対象。それぞれ1次検査は超音波を使って甲状腺のしこりの大きさや形を調べ、程度の軽い方から「A1」「A2」「B」「C」と判定する。大きさが一定以上で「B」「C」とされれば、2次検査で血液や細胞などを詳しく調べる。
県民に寄り添う対応を 健康調査、福島で検討委
2016年9月15日 福島民報http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2016/09/post_14191.html
福島市で14日に開かれた県民健康調査検討委員会で、委員から今後の検査の在り方について長期的に事業を継続するとともに、より県民に寄り添った対応を求める声が上がった。
清水一雄委員(日本医大名誉教授)は「被災者に寄り添った立場の対応をまず考えるべき。その上で検査で『必要なこと』『必要でないこと』を判断した方がよい」と述べた。堀川章仁委員(双葉郡医師会長)は甲状腺検査だけでなく、身体的、精神的見守りの必要性を指摘。「震災、原発事故から5年以上がたって生活状況が変わる中、ここで目を離すべきではない」と主張した。
春日文子委員(国立環境研究所特任フェロー)は長期的な検査に理解を示した上で「検査などの長所、短所をできるだけ分かりやすく、丁寧に説明することが必要だ」と唱えた。今後の課題として高村昇委員(長崎大原爆後障害医療研究所教授)は受診率の低下を挙げた。「県外に転出した人たちを含め、検査しやすい態勢づくりが求められる」とした。
清水修二委員(福島大経済経営学類特任教授)は「被ばくの影響の確認を求めるあまり、県民に痛手を与えてしまうのは(検査趣旨に反して)本末転倒になる」とし、検査目的と丁寧なケアの両立を求めた。
■県民受け止めさまざま
保護者からは放射線への不安から検査継続を支持する意見が多く聞かれた一方、長期に及ぶ検査を負担に感じる声も出ている。
二本松市に避難している浪江町の女性(43)は中学3年の長男と中学1年の長女が対象となっている。「検査で見つかったがんと原発事故には因果関係はないとされているようだが、正直、不安はある」と制度の継続を望んだ。飯舘村は県による検査の合間に独自に検査しているが、転出すれば受診できなくなる。中学1年と小学6年の娘2人を育てる会社員女性(37)は「県民なら誰でも受けられる検査を続けるべきだ」と訴えた。
小学6年の長男の検査結果に異常はないという郡山市の公務員男性(46)は「変異する可能性もゼロではない。学校検診に盛り込むなど負担の軽い方法で続けてほしい」と求めた。
◇ ◇
14日の検討委員会で県が示した「県民の声」からは検査を巡って県民の悩みの奥深さも浮かんだ。
「いつまで検査を続けなければならないのか」「放射線の影響評価のために検査を受けさせているわけではない」「検査自体が負担」-。県や福島医大には現在も電話やメールで意見や要望が寄せられているという。
長女(6つ)が検査を受けている福島市の主婦(32)は検査は必要としつつ、「結果の信ぴょう性を疑うこともある。検査の案内が届くたびに言い様のない気持ちになる」と複雑な胸の内を明かした。
■2巡目の子ども甲状腺検査 がん確定34人に
東京電力福島第一原発事故を受け、平成26年4月に始まった2巡目の子どもの甲状腺検査(本格検査)で、6月末までに甲状腺がんと確定したのは34人となり、前回公表(3月末現在)から4人増えた。1巡目の先行検査と合わせると、がんと確定したのは135人となった。
14日に福島市で開かれた県民健康調査検討委員会で県と福島医大が示した。
本格検査のがんの疑いは25人で前回公表より2人減り、「確定」と「疑い」の合計は前回より2人多い59人となった。内訳は男性25人、女性34人で、2次検査時点の年齢は9歳から23歳だった。59人のうち、事故から4カ月間の外部被ばく線量が推計できた32人の最大線量は2・1ミリシーベルトで、1ミリシーベルト未満は12人だった。
本格検査で血液や細胞などを詳しく調べる2次検査に進んだのは計2217人。26年度は15万9104人が1次検査を受診し、全体の0・8%の1303人が2次検査の対象となった。27年度の1次検査受診者は11万1274人で、0・8%に当たる914人が2次検査対象となった。
◇ ◇
県は3巡目の甲状腺検査(本格検査)の1次検査の実施状況も示した。平成29年度分の検査も前倒しで28年5月から実施している。
■事故後4カ月の外部被ばく 1ミリシーベルト未満62.2%
県は県民健康調査の基本調査で得られた原発事故後4カ月間の外部被ばく線量の推計結果を報告した。全体の62・2%に当たる28万8240人が1ミリシーベルト未満だった。
各地方の合計人数に対する1ミリシーベルト未満の割合は県北が20・0%、県中が51・5%、県南が88・3%、会津が99・3%、南会津が99・3%、相双が77・3%、いわきが99・1%だった。推計結果には放射線業務従事経験者は含まれていない。
甲状腺検査...『在り方』議論 福島県民健康調査・検討委員会
2016年9月15日 福島民友http://www.minyu-net.com/news/news/FM20160915-111750.php
東京電力福島第1原発事故に伴う健康影響を調べる「県民健康調査」の検討委員会が14日、福島市で会合を開き、事故当時18歳以下の全県民約38万人を対象にした甲状腺検査を巡り、今後の対象範囲をどうするかなどについて、在り方の議論に入った。
2011年から始まった甲状腺検査では、6月末現在で135人ががんと確定。がんの疑いは39人に上っている。検査の手法については規模縮小と拡充を求める両論がある。各団体からの要望などを踏まえ、今後は「18歳を超えた人の検査をどうするか」などを論点に検討が進む見通しだ。
甲状腺検査を巡っては、県小児科医会が8月に「検査によって子どもや保護者に不安が生じている」として検査規模の縮小も含めた見直しを県に要望。一方で「311甲状腺がん家族の会」は同月「過剰検診のデメリットはない」として、県に規模拡充を求めた。
要望を受け、座長の星北斗県医師会副会長は「今後の検査について意見を聞きたい」と委員に呼び掛けた。委員からは「甲状腺がんの手術を受けた子どもと家族の意見に沿った対応が必要。少なくとも10年は縮小せず進めるべき」「(放射線影響の有無を判断するための)データが少なくなっては県民が不幸。できる限りデータを集める方向で進むべき」などの意見が出た。
一方「検査を望む人が受けられる態勢が大事。(県外への進学などで)18歳以上の受診率が下がるのをどうするか議論が必要」「子どもの甲状腺がんについては臨床的対応が必要ないものもある。検査の長所と短所を分かりやすく説明して、一人一人に判断してもらうべき」など検査手法の改善を求める意見も挙がった。
記者会見した星座長は「2、3巡目の検査の評価や、県小児科医会が独自に行う検査の在り方についての検討も見ながら議論を進める」と、時間をかけて検討していく考えを示した。
福島県が行っている甲状腺検査について、今後のあり方が議論されました。
福島第一原発事故当時18歳以下だった県民など38万人あまりを対象に県が行った検査では、これまでに135人にがんが見つかっています。
この検査のあり方をめぐっては、先月、県小児科医会が「検査の縮小も含めた見直し」を県に求めましたが、甲状腺がん患者の家族会が「検査の継続と拡大」を訴えていました。
14日に開かれた検討委員会では、「がん患者家族の立場に寄り添うべき」「できるだけ正確なデータを取るべき」など、当面は検査の規模を縮小すべきではないとの意見が大半を占めました。検査のあり方については今後も議論されます。
甲状腺検査「継続」意見相次ぐ=がん診断34人に-福島県
2016年9月14日 時事通信http://www.jiji.com/jc/article?k=2016091400823&g=soc
東京電力福島第1原発事故による健康への影響を調べるため福島県が実施している甲状腺がん検査について、有識者による検討委員会が14日開かれた。委員からは当面検査を続けるべきだとする意見が相次いだ。
検査をめぐっては、県小児科医会が「治療不要の症状が見つかることで健康不安を生じさせる」として縮小を要望している。この日の会合では、チェルノブイリ原発事故では5年ほどたった後に、がんの発症が増えたと指摘する意見が目立った。
会合では、事故当時18歳以下(胎児を含む)の県民を対象として、2014~15年度に実施した2巡目の検査結果も報告された。検査を受けた約27万人のうち、「悪性か悪性の疑い」と診断された人は6月末時点で59人、手術でがんと確定したのは34人。3月末はそれぞれ57人と30人だった。
事故当時胎児だった人を除く1巡目の検査では、101人が甲状腺がんと診断された。県は今年5月に3巡目の検査を開始している。
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