2016/09/07

放射性廃棄物再利用 被ばく拡大許さない 市民らが「学習研究会」発足/滋賀

2016年9月7日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160907/ddl/k25/040/627000c

東京電力福島第1原発事故による汚染土について、放射性セシウム濃度が1キロ当たり8000ベクレル以下なら道路の盛り土など公共工事で再利用する方針を国が決めたことを受け、関西の市民らが「放射性廃棄物問題学習研究会」を発足させた。被ばくの危険を広げる国の難解な説明を分析し合って要点をまとめ、論理的に対抗するという。(太田裕之)

国は8000ベクレル以下を認める方針

NPO法人市民環境研究所(京都市左京区)の石田紀郎代表理事と、研究員で原発事故の問題と防護対策に詳しいフリーライター、守田敏也さん(京都市)が呼びかけ人となり、8月11日に同研究所で開いた初会合には京都、大阪、滋賀などから25人が参加した。

国は、福島県内の中間貯蔵施設で最大2200万立方メートルと見込まれる汚染廃棄物を2045年3月までに県外で最終処分するため、再利用も進める方針を示している。守田さんは「今まで決めてきたことを無視した放射性物質のばらまき、押しつけが狙われている」と指摘した。

原子炉等規制法は原発敷地内での廃棄物の再利用基準(クリアランスレベル)を100ベクレル以下と規定している。だが、11年3月の福島事故後には東京都内で下水処理による汚泥の焼却灰から10万ベクレル以上が検出される深刻な事態となり、原子力災害対策本部は同年6月に8000ベクレル以下なら通常の管理型処分場で埋め立て可能と通知。12年1月に全面施行された放射性物質汚染対処特別措置法も8000ベクレル以下を一般の廃棄物と同様に処理することにした。


さらに今回、国が方針を決めた公共工事での再利用基準も同じ数値とされた。再利用現場の作業員や近隣住民の被ばくが一般人の年間被ばく線量の上限値1ミリシーベルト以下となるよう計算したと説明されるが、従来のクリアランスレベルの80倍だ。国は再利用する汚染土は50センチ以上の土をかぶせるなどするので安全だと主張するが、守田さんは「地震などによる崩壊、地下水への浸透なども心配され、全く信用できない」と指摘した。

こうした問題の背景として、守田さんは福島原発事故までは原発敷地外への放射性物質の大量放出が想定されず、管理する法律がなかったことを挙げて「国の誤り、政府の極めて大きな責任だ」と指摘。抜け道のない管理を徹底するための放射能汚染防止法を制定する必要を訴えた。

参加者からも「内部被ばくが怖い」「官僚は都合よく言い換えてだます。戦時中と同じだ」などの懸念や批判の声が出た。「(避難先からの帰還の目安の年積算放射線量)20ミリシーベルトを福島の人に受け入れさせるために放射性廃棄物を全国に拡散させようとしている」との指摘もあった。守田さんは「少しでも被ばくしない権利を主張することが大切。8000ベクレルも許さないことで、さらにひどい福島での被ばくを許さないことにつなげる」と話した。

19日に会合

次回会合は19日午後2時から同研究所で予定。守田さんが前回の復習も含めて話す他、石田さんが、琵琶湖に近い高島市の鴨川河川敷に放射性セシウムに汚染された木くずが不法投棄された問題について報告する。問い合わせは守田さん(090・5015・5862)。

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