http://mainichi.jp/articles/20160910/ddm/010/040/003000c
チェルノブイリ原発事故(1986年)による災害弱者の支援をロシア南西部で約20年続ける非政府組織(NGO)職員、エカテリーナ・ブイコワさんが8月、福島県などの小中学校の教諭らを訪問した。放射能(放射性物質)汚染地域での教育や健康管理の経験を話して交流した。【大島秀利】
エカテリーナさんは元小学教師で、98年から同原発の北東180キロのロシア・ノボジプコフ地区にあるNGO「ラディミチ」職員。付近は、日本の避難指示区域にあたる汚染があり、そこに残らざるをえない人々に寄り添って活動する。福島の被災者も支援する団体「チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西」の案内で福島を訪れた。
「子どもたちは学者の話を聞いたり、体験談を読んだりして、いかに原発が悲劇をもたらしたかを学びます」。エカテリーナさんは子どもの年齢に応じた放射線防護教育が大切だと強調した。
放射線から身を守るブックレットを携えて来日したエカテリーナさん=大阪市で8月10日 |
その拠点が10年前に開設した「チェルノブイリインフォメーションセンター」だ。事故の写真や、収束作業者や遺族の証言、一般市民の当時の日記、新聞の切り抜きも集めた。原発推進の学者の資料も展示する。スイス政府の援助を受け、専門家を招き、放射線の健康や環境への影響を学ぶ。福島第1原発事故の資料や写真の特設コーナーもある。
生活の中で放射線から体を守る方法は、ブックレットを作製し、丁寧に教える。具体的には、陸や川のどんな場所が放射能がたまるホットスポットになりやすいか、野生のキノコなどで危険なものは何か−−などを示す。「子どもを通じ、家族や友達に伝わり、さらに年下の世代に広げたい」と話す。
子どもが汚染地域を離れて一時的に暮らす「保養キャンプ」が重要とされるが、利便性を考えて、遠隔地ではなく比較的近い非汚染地域でキャンプ場を運営しているのも「ラディミチ」の特徴という。
福島市立岳陽中学の大槻知恵子教諭(理科)は「福島では組織的な避難ができず、つらい思いをした住民がいた。ロシアなどから見習うべきところは国を挙げ取り入れるべきだ。放射線の基礎を理解させるためにロシアの教科書も参考に、教育のあり方を考えられれば」と感想を話した。
エカテリーナさんは今後も福島の被災者や教員らと交流を続け、お互いに学び合いたいと願っている。
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