2015/01/12

甲状腺検査 放射線の影響どう解明 内部被ばくの分析が鍵/福島


 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から11日で3年10カ月となる。原発事故を受けた子どもの甲状腺検査は一巡目の先行検査を終え、二巡目の本格検査に移行した。甲状腺検査は子どもの健康を守る目的で始まったが、県「県民健康調査」検討委員会では、検査の在り方をめぐり、甲状腺がんと被ばくの因果関係の検証にまで踏み込むべきだとの声が上がる。長期にわたる調査の進め方はどうあるべきか−。見直しを含めた議論がどこまで深まるのか注目される。一巡目の先行検査では甲状腺に「問題ない」とされた4人が、二巡目で「甲状腺がんあるいはがんの疑い」と診断された。検討委は「放射線の影響は考えにくい」と従来の見解を維持している。

 二巡目の本格検査に入り、検討委には甲状腺検査の在り方にさまざまな意見が出ている。県や福島医大は県民の健康を見守ることを検査の主眼に置いてきた。だが、検討委では原発事故による被ばくの影響の解明を求める声が高まっている。

 座長代行の清水修二福島大特任教授は「世界史的な記録を後世に残す使命もある。科学的な限界はあるにしても結論を出さないということはあり得ない」と前向きだ。

 被ばくと甲状腺がんの因果関係を解明していくためには内部被ばく線量の分析が欠かせないという。ただ、現行の県民健康調査で分析しているのは、行動記録などを基にした原発事故後4カ月間の外部被ばく線量の推計が基本だ。

 星北斗座長(県医師会常任理事)は内部被ばく線量の調査・分析について「糸口は細いがやらなければならない」と、調査方法の見直しに言及している。

 二巡目で「甲状腺がんあるいはがんの疑い」とされた4人は事故当時、6歳男子、10歳男子、15歳女子、17歳男子で、腫瘍の大きさは7〜17・3ミリだった。福島医大の報告によると、一巡目の検査で2人が「A1」、他の2人は「A2」と判定され、いずれも「問題ない」とされていた。

 検討委では、この4例について「一巡目の検査でがんを見逃した可能性」や「一巡目の検査の後にのう胞やしこりが急激に大きくなった可能性」などが指摘された。一般的に甲状腺がんは他のがんに比べ成長が遅いとされる。星座長は検討委で出された意見や見解を総括し、「現時点で放射線の影響は考えにくいという(従来の)見解を変える要素ではない」との見方を示した。

 甲状腺検査は20歳までは2年ごと、それ以降は5年ごとに実施する計画で、検討委は詳細なデータの蓄積が健康維持には欠かせないとしている。長期的な検査に対する県民の理解が急務となっている。


















■甲状腺検査 過剰診断判断など3月までに報告書

 検討委では甲状腺検査について、必ずしも治療の必要がない甲状腺がんが見つかる「過剰診断」を懸念する意見も出た。検討委の甲状腺検査評価部会は3月までに、検査が過剰診断に当たるかどうか、検査体制や手法の見直し案などを盛り込んだ報告書をまとめる。

 健康を守る上で長期的な検査が必要との意見がある一方で、渋谷健司東大教授(公衆衛生学)は「検査による心身の負担など、子どもの健康を守るという検査の目的に対し不利益が大きい」との認識を示している。


※甲状腺検査とは

 1巡目の先行検査の対象は事故当時に18歳以下だった約37万人、2巡目の本格検査は事故後1年間に生まれた子どもを加えた約38万5000人となっている。それぞれ、1次検査は超音波を使って甲状腺のしこりの大きさや形を調べ、程度の軽い方から「A1」「A2」「B」「C」と判定する。大きさが一定以上で「B」と「C」とされれば、2次検査で血液や細胞などを詳しく調べる。1巡目に比べがんが増えるかなどを比較する。


■甲状腺検査 外部被ばく線量推計 問診票の回収低調

 検討委は甲状腺検査の時期や年齢、被ばく線量など多方面から慎重に分析を進める方針だが、重要な基礎データとなる被ばく線量を推計する問診票の回収が進んでいない。原発事故発生後4カ月間の外部被ばく線量の推計は、全県民を対象とした基本調査の問診票を基にしている。昨年10月31日現在の回答率は26・9%(55万3418人)にとどまる。事故直後の記憶が薄れ、行動記録の記入が難しいことが主な理由だ。地域によって回答率にばらつきもある。

 これまでの調査では、情報量に乏しく被ばく線量の推計に偏りがあるのではないか−との指摘が出ていた。そのため、県と福島医大は27年度内に、県内各地から無作為に4千〜5千人程度を抽出し、新たに戸別訪問調査を実施する。

 事故後の行動記録を記入してもらうなどして被ばく線量の推計を新たにまとめる。これまで実施した基本調査での推計値とどのような違いがあるかを分析し、今後の調査の在り方を再検討することにしている。


※甲状腺検査
 1巡目の先行検査の対象は事故当時に18歳以下だった約37万人、2巡目の本格検査は事故後1年間に生まれた子どもを加えた約38万5000人となっている。それぞれ、1次検査は超音波を使って甲状腺のしこりの大きさや形を調べ、程度の軽い方から「A1」「A2」「B」「C」と判定する。大きさが一定以上で「B」と「C」とされれば、2次検査で血液や細胞などを詳しく調べる。1巡目に比べがんが増えるかなどを比較する。

2015/01/11
福島民報
http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2015/01/post_11293.html

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