[放射線の影響について、子どもたちが学校でどのような話を聞いてくるのか、学校教育の場でどのような取りあげ方をされているのか、とても重要です。子どもたちはこの先何十年も、自分たちで被ばくから守ることを考えつつ、暮らさなくてはいけないからです。
この記事にあるように、初年度、環境中にもあること+影響は量の問題であるとしか伝えられなかったとしたら、一番影響がある放射線値の高い時期に、どういった場所が高くて、どう防ぐべきかを知らないまま、「放射線は環境中にもあるもの」だから安心…と思ってしまった子どもがいなかっただろうかと思います。それは意図的ではないとしても、防げたはずの子どもの被ばくを増やすことにつながらなかったでしょうか。
繰り返し伝えることは確かに大事です。被ばくは確かに量の問題もあるけれども、しきい値はないことが基本なのだと考えます。]
繰り返し伝える意味 坪倉正治
11月と12月の2回、川内村の小学校と中学校で放射線の話をする機会をいただきました。小学校では1, 2年生(10名強)と3〜6年生(20名弱)の2回、中学校では20名弱全員に向けて話をしました。
話す内容はいつもと変わりません。
放射線とは何かを話し、その放射線は環境中にも元来存在することを伝えます。
そして、放射線の身体への影響は量(程度)の問題であること、
その程度を知るために、放射線は計測することができること、
そして今現在、どのような場所や物を測って比較的高い放射線かどうかを判断しているのか、といった流れです。
授業は毎年1回ですが、別の説明会の場や、ひらた中央病院での検査のときにお会いしたりと、繰り返し顔を合わせる生徒が増えてきたからか、だいぶお互いに緊張をせずに話ができるようになってきました。
当たり前かもしれませんが、何度も繰り返し伝えることで少しずつ理解が深まってきていることを感じます。
最初のころ、45分間の授業時間では、もともと環境中に放射線があること+影響は量の問題であることを伝えるので精いっぱいでした。飛行機や宇宙線、温泉、花崗岩(かこうがん)など、色々と例をあげて説明するのですが、言葉で伝えるだけでは、環境中に放射線があることになかなか実感が伴いません。それを話し終えたころには集中力を使ってしまった後で、その先の話まで到達できませんし、伝えたとしても残りません。
最後の5分間でこの授業で学んだことをノートに書いて発表してもらうのですが、生徒さんの中には、環境中に放射線がある(だから、放射線は大丈夫?)みたいな理解になってしまうこともあり、バランスの悪さを感じていました。逆の例として避けたいのは、いわゆるホットスポットの話や、汚染の高くなる食品といった、不安の募る情報ばかりが伝わってしまう授業です。
今年も同じような内容から話を始めたのですが、去年と同じことを話したからか、最初の部分に時間がかからず、さらにその先(放射線は計測することができることや、どのような場所や物を測れば比較的高いのかといったこと)に進むことが出来ました。
放射線は浴びすぎると危険なこと、もともと環境中にもある程度存在すること、流通食品の安全性は高いこと、でも一部の食品に汚染は残っていること、ガラスバッジ(個人線量計)の値は徐々に下がっていること、空間線量は震災前よりは高く、一部に比較的高い値の方がいらっしゃることといった、裏表の情報があります。学校の先生によっては、「どうすれば危険なのか(より多く被曝するのか)だけ教えてくれ」という方もいらっしゃれば、「生徒を不安にさせないように、気にしなくて良いということだけ伝えてくれればいい」という方もおられ、様々です。
いずれにせよ、繰り返し繰り返し基本的なことや検査結果から分かってきたことを伝えていくしかありません。何度も伝えることで表裏のバランスをとりながら理解し、最終的には色々な考えがあることをお互いに理解し尊重出来るようになっていって欲しいと思っています。試行錯誤が続いています。
2014年12月30日
朝日アピタル
http://apital.asahi.com/article/fukushima/2014122900010.html
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