2015/01/30

(株)千代田テクノルHPより「個人線量当量と周辺線量当量について」

[週刊朝日の記事としてアップしたこちらの記事(http://kodomozenkoku-news.blogspot.jp/2015/01/4.html)に関して、当該会社である千代田テクノルが下記のような見解を発表しています。この文面によれば、ガラスバッジは(4割減などということではなく)個人線量当量を正しく測定しているが、周辺線量当量のほうが4割高くなるのだ、ということです。いずれにしても、今まで「1ミリシーベルト」を年間の大衆の公衆被ばく限度として扱ってきたケースでは、周辺線量当量で対応してきたはずで、それを今回、個人線量を持ち出すことで、実際には4割高い放射線値の地域でも、1ミリシーベルトを超えないという計算をする国の対応の理不尽さを訴えたいです。 子ども全国ネット]


「個人線量当量と周辺線量当量について」
http://www.c-technol.co.jp/archives/1038


週刊誌などで個人線量当量と周辺線量当量について誤解が見受けられますので、弊社見解について説明致します。

 サーベイメータなどで空間線量(率)を測定する場合、「周辺線量当量(率)」として定義された量を用いることになっています。「周辺線量当量」は、国際放射線単位計測委員会(ICRU)によって定義された量で、放射線の入射する方向に関わらず測定を実施する場所だけで定まる量であり、サーベイメータなどの測定器は、その定義に合わせすべての方向に均一な感度を持つように様々な工夫が施されています。

一方、個人の被ばく線量は、放射線被ばくによる個人の確率的影響の程度を表す「実効線量」という量で考えることになっています。「周辺線量当量」が同じ場所であっても「実効線量」は人体の向きによって値が変わります。人体の正面から放射線を受けた場合と背面から受けた場合では、前者の方が実効線量は大きくなります。これは、放射線感受性の高い臓器の多くが体の前側にあるためです。実効線量は実測出来ないため、測定のための「個人線量当量」がICRUによって定義されています。個人線量計はこの「個人線量当量」が測定できるように設計され、人体に着用した個人線量計の計測値はγ線がどの方向から入射しても実効線量より低い値を示すことはありません。γ線が全周囲から照射された場合、その値は実効線量とほぼ一致します。つまり、個人線量計の値は個人の被ばくした実効線量により近い値を示していると言えます。

定義上、常に「周辺線量当量」は「個人線量当量」よりも高くなるという関係があり、測定対象とする場所にγ線が全周囲から入射した場合には「周辺線量当量」は「個人線量当量」に比べて30~40%値が高くなります。

参考文献:

①    ICRP Pub.74 (1996)

②「東京電力㈱福島第一原子力発電所事故に係る個人線量の特性に関する調査」報告、

(独)放射線医学総合研究所、(独)日本原子力研究開発機構 (2013)

③「実効線量を理解するために」Isotope News, No.722, TRACER 2014年6月号

④「周辺線量当量と個人線量当量」放計協ニュース1988, No.2

⑤「広く利用されている放射線 30」原子力産業新聞 2014年6月5日

⑥「広く利用されている放射線 37」原子力産業新聞 2014年9月18日

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