二つの「原発」皮膚感覚で 中筋純さん(49)
原発事故から5年の時が流れた福島、30年が経過したチェルノブイリ−−。放射性物質に汚染された二つの土地にどんな時間が流れているのかを記録した写真展「The Silent Views」が今年3月、出身地・和歌山市の県民文化会館でスタートした。来年3月の福島県(郡山市、福島市)まで、広島、長崎など全国11都市を巡回している。
東京外国語大を卒業後、出版社勤務を経てフリーカメラマンとなった。ファッションなどの商業撮影が主だったが、「人間の存在を超越するものを撮りたい」との思いから産業遺構や廃虚の撮影を続けた。
2007年に初めてチェリノブイリへ足を踏み入れ、これまでに計6回取材。「廃虚チェルノブイリ」など三部作の写真集を08〜14年に出版した。福島には今も、浪江町、双葉町などに月1回程度足を運んでいる。
住人不在となった土地では、防護服に身を固めた作業員が、廃炉に向けた気の遠くなるような作業などを続ける。一方で、野生化した家畜が我が物顔で歩き回り、植物は生命を謳歌(おうか)するかのように、大地を覆っていた。「人間にとって全てが断ち切られ、無価値になってしまう」という原発事故の現実を目の当たりにした。
だがチェルノブイリ周辺では、汚染を承知でそこに住み続け、畑を耕してたくましく生き続ける人々の姿も目にした。「現地を歩かなければ本当のことはわからない。原発とは何か考えるため、皮膚感覚でわかる作品を提供し続けたい」
次回の巡回展は30日〜7月6日、長野県茅野市にある茅野美術館併設のギャラリーで開催される。詳細はフェイスブックhttps://www.facebook.com/2016Fukushima.Chernobyl/?fref=tsで。
【矢倉健次】
0 件のコメント:
コメントを投稿