2016/06/09

コメ作付け昨年の2.4倍「震災前」回復見通せず 担い手不足が深刻 南相馬/福島

2016年6月9日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160609/ddl/k07/040/016000c 

南相馬市の今年のコメの作付け面積は約1750ヘクタールと、昨年実績の2・4倍になった。一部の専業農家や地域の営農組織が休耕田を借り上げ、作付け面積を広げた。ただ、東京電力福島第1原発事故後の風評被害やコメ価格の低下で多くの農家が営農再開をあきらめ、担い手不足が常態化している。震災前の作付け面積を回復する見通しは立っていない。【大塚卓也】

JAふくしま未来相馬本部によると、同市内で5月9日までに作付けされたのは原町、鹿島の両区と、全域が避難指示区域の小高区の合計で1736ヘクタール。震災前の6割程度にとどまった。

このうち8割強の約1450ヘクタールが家畜などのえさにする飼料米で、主食用は2割弱だった。震災前からのコメ余りに加え、消費者が浜通り地域のコメを敬遠する傾向が続いているため、農家が卸業者などから買いたたかれることを見越して、主食用の作付けを抑えている事情がある。

同市の2013年産米の一部から、出荷前検査の際に、国の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射性物質が見つかったことも「尾を引いている」(JA関係者)。

今年は、法人化した営農組織が市などの補助金を受けて大型機械の導入などを進めた結果、作付け面積は前年より拡大した。7人の社員で農作業を続ける高ライスセンター(原町区高)は5月中に65ヘクタールを作付けし、昨年から17ヘクタール増えた。佐々木教喜(のりよし)社長(66)は「昨年まで田んぼを放棄していた高齢の農家から頼まれて作付けを広げたのがほとんどだ」と話す。

鹿島区浮田地区の有志農家7人で組織するうきた夢ファームも今年は約90ヘクタールと昨年より作付けを広げたが、「半分は地域の地権者から預かって耕した」(西一信社長)という。

南相馬市では、営農自粛に対する東京電力からの賠償金が、避難指示区域を除いて14年度で打ち切られた。これを受けて市は15年度の作付けは震災前の実績の半分程度の1500ヘクタールと見込んでいたが、実績は729ヘクタールと半分以下だった。

市は耕作再開への補助金助成などを進め、今年目標とした1800ヘクタールはほぼ達成する見通し。しかし、市の担当者は「補助金を目いっぱいそろえての目標達成で、担い手不足も深刻だ。来年以降、右肩上がりが続くかは楽観できない」と、慎重な姿勢だった。

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