2016/06/02

双葉の救急医療、前進 県立医大と協定、郡内消防署に医師/福島


2016年6月2日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160602/ddl/k07/040/191000c

東京電力福島第1原発事故の影響で救急医療体制が厳しい状況に陥っている双葉郡内の消防署に、県立医大の救急医が1日、配置された。当面、平日の日中に限られるが、今後時間延長など体制強化も検討する。住民の病気やけがの処置に加え、原発の廃炉や除染作業に伴う労災事故や幹線・高速道での事故で入院の必要な重症患者(2次救急)への対応充実を目指す。

双葉郡内の救急搬送を管理する双葉地方広域市町村圏組合(管理者=馬場有・浪江町長)と県立医大が同日、配置に関する協定を締結した。県が県立医大に委託した事業で、昨年9月から実施に向けた検討が進められていた。予算規模は約2億円。県立医大によると、付属病院(福島市)内に設置した「ふたば救急総合医療支援センター」に所属する救急医が、消防本部の富岡消防署楢葉分署(楢葉町)に配置される。センター所属医師は3人で、平日の日中にうち1人が勤務する。

119番があると、医師は救急車に同乗して現場にかけつけて初期治療に対応。搬送先病院の選定などの調整にも当たる。今後は医師のみで現場に駆けつけるための緊急車両も配備する予定で、機動力の向上も目指すという。

原発事故以前、同郡内には入院や手術の体制を整えた2次救急医療機関が4施設あったが、すべて避難指示区域内にあるため、現在はゼロとなっている。同消防本部によると、郡内からの救急搬送者の7割超はいわき市や南相馬市など郡外の2次救急医療機関へ搬送されている。協定締結式で馬場町長は「(郡内を通る)国道6号は通行車両が増え、事故の危険度も高まっている。専門医療が必要だ」と話した。【曽根田和久】

富岡消防署楢葉分署への医師配置に関する協定書を取り交わし記念撮影に応じる
馬場有浪江町長(左端)と県立医大の関係者ら=福島市の県立医大で

住民帰還促進、後押しに期待 救急医療強化

原発事故による避難指示区域を含む双葉郡内の2次救急医療体制の強化に、県や郡内の自治体からは住民の帰還促進の後押しとして期待する声も上がる。

消防署で医師が待機するシステムは、2次救急を担う病院がない郡内での暫定措置。待機時間も日中に限られ、夜間は現状と変わらないが、1日の協定締結後にあった記者会見で馬場有・浪江町長は「(避難指示解除後に)帰る人、帰還を迷っている人で一番ニーズが多いのは医療」と強調。「2次救急医療システムができたということで安心するのではないか」と期待した。

双葉地方広域市町村圏組合消防本部の統計では、昨年1年間に双葉郡内からの救急搬送は491人。このうち約74%に当たる361人が双葉郡外の医療機関への搬送だった。ドクターヘリによる搬送者も21人いた。郡内での救急搬送の危機的状況が浮き彫りとなる。県地域医療課の担当者も「いざという時にすぐ治療してもらえないというのは住民にとっても不安」と、医療体制が帰還判断へ影響する可能性を示唆する。

救急車で医師が現場に出向くことで、搬送者が医師の診療を受けるまでの時間は、約1時間から20分に短縮される見込み。医師を派遣するふたば救急総合医療支援センターは高齢者の訪問診療などにも取り組むといい、谷川攻一センター長は「帰還住民が増える中で、救急医療を軸に据え、健康に対する体制を整備したい」と力を込めた。

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