2016/06/05

日曜論壇:食品規制(6月5日)

2016年6月5日 福島民報
https://www.minpo.jp/news/detail/2016060531618

4月にいわき市で開催された第1回福島第一廃炉国際フォーラムで、経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)から、風評被害を払拭[ふっしょく]するために「食品規制に関する新たな枠組みで安心感を醸成すべき」との考えが示された。

日本は2012年に食品中の放射性物質の年間許容線量を1ミリシーベルトと改訂し、国際食品規格委員会と欧州連合(EU)の規制値と同じにした。ただ、食品個々の規制値は異なる。例えば一般食品で見ると、EUは1キロ当たり1250ベクレルだが、日本は100ベクレルだ。差の主な理由は、食品の何割が汚染しているかという仮定の差だ。EUは、食品の10%が1250ベクレルまで汚染していると仮定するが、日本は50%と仮定するので、100ベクレルと厳しい規制となる。

その年の食品測定のデータで見ると、汚染の割合は10%よりも既にかなり低かった。従ってこれは国際的な枠組みの議論というより、日本が国内の実態を考慮して再考すべき課題と思う。

福島県では市場に出る食品は早い段階から安全性を確認している。その代表例がコメだ。2012年秋から全数検査が行われ、市場に出るコメの安全度は高く、JA関係者からは福島のコメは国内でも一番安全なコメだと自信の声が聞こえる。

EUは2年間規制値以下であったら輸入禁止を解除する予定と聞いているが、残念ながら昨年の解除リストからは外された。ただ、昨年の新米は全て規制値以下であったので、もう1年不検出なら輸入禁止が解除されると思う。海外への輸出を考えた場合、日本とEUには歴史的な課題がないので、科学データに基づく率直な議論が期待できる。今後のさらなる規制緩和が行われることを期待したい。

ところで、福島県は2011年のコメの収穫で、市場に出されるコメは当時の暫定規制値を下回っていたので、メディアとの議論の中で安全宣言に踏み切った。残念ながら、その後に規制を上回るコメが3袋見つかり、県は短期間の準備で翌年から全袋検査に踏み切った。

全数検査を行っているコメや牛肉に加え、大豆、小豆やソバなどの穀類の検査についても進展がみられた。検査はエリアごとに行われてきたが、万一の基準超えの影響を考え、県内を約400エリアと細分化して検査してきた。しかし、安全性が高まってきたとして、59の市町村単位に大くくりにするとの発表が最近あった。

このような現状を踏まえると、2011年に議論された「安全宣言」という表現の仕方をもう一度食品ごとに使えないかと思うようになった。データの裏付けのある「安全宣言」という言葉は理解しやすい。コメや牛肉の実績に加え、穀類のように安全が確認できた食品ごとに、その検査の仕組みと組み合わせて安全宣言をする。その安全宣言がされたリストに載せられる食品を増やしていくことは、風評被害対策にならないか。(角山茂章、会津大前学長)

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