東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た廃棄物の減量と再利用に向けた環境省の有識者検討会は7日、東京都内で会合を開き、放射性セシウム濃度が基準値以下となった除染土壌を全国の公共工事で使うとする再利用の方針案を大筋で合意した。近く同省が正式決定する。
方針案によると、管理責任が明確で、長期間掘り返されることがない道路や鉄道、防潮堤、廃棄物処分場などの公共工事に利用先を限定。再利用の使用基準は、除染土壌を直接取り扱う工事中の作業員の年間被ばく線量が1ミリシーベルト以下となるよう、用途や作業期間に応じて放射性セシウム濃度を1キロ当たり5000~8000ベクレル以下と定めた。さらに工事終了後の住民の年間被ばく線量が0.01ミリシーベルト以下まで大幅に低減されるよう土で覆う厚さも盛り込んだ。
再利用の濃度の上限とされる1キロ当たり8000ベクレルは、国が放射性廃棄物として管理型処分場で最終処分する同8000ベクレル超の指定廃棄物との整合性などを考慮し、算出された。労働安全衛生法に定められた国の電離則や除染電離則では、同1万ベクレルを超える汚染土壌を扱う場合、線量管理や濃度測定などの対策が必要と定められているが、その値よりも低い。
しかし、通常の原発の廃炉で出る放射性廃棄物が制限なく再利用できる基準は1キロ当たり100ベクレルとされ、環境省の新たな再利用案が決まれば、二重の基準が存在することになる。
再利用の基準は、単純比較すると通常の基準の最大80倍高い濃度に当たり、全国の自治体や住民から理解を得られるかは不透明だ。県内には、防潮堤などの盛り土とすることで事実上の最終処分になるのではと懸念の声もある。同省の担当者は「対策や管理の下に使用することが前提で、全く別の基準だ」としている。
井上信治環境副大臣は検討会終了後、報道陣に「安全性を確保することと、国民の信頼を醸成することが重要だ。福島県外も含め、再利用に理解をいただきたい」と述べた。
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