2015/03/13
子供のこと考えて 2DK6人、我慢の生活
毎日新聞 2015年03月13日
http://mainichi.jp/shimen/news/20150313ddm041040107000c.html
東京電力福島第1原発事故の避難者が住む「みなし仮設住宅」を巡り、自治体によって住み替えへの対応が大きく異なることが分かった。首都圏では住宅事情が厳しいためか、住み替えを認めない傾向が強い。しかし、特に自主避難者や避難指示が解除された地域からの避難者にとって、住み替えの可否は避難を続けられるか否かに直結する。避難者らは行政に前向きな対応を強く求めている。
福島市から自主避難した女性(32)は外国籍の夫と4人の子供と郊外の東京都営住宅に暮らす。事故当時は3人目の子供を妊娠中で、被ばくによる健康影響を懸念して東京に転出。昨年11月には4人目の子供を出産した。
女性が住む都営住宅は52平方メートルの2DK。家族が一緒に食事できるテーブルはなく、子供の勉強机も一つしか置けない。女性は毎晩、3人の子供と同じベッドで寝る。都庁などに住み替えを求めてきたが、都の基準では家族の増員は理由として認められない。一方で福島市内の実家周辺はまだ線量が高いと聞き、「そんなところに(子供を)通わせられない」と感じる。女性は「何もないのを我慢して子育てするしかない」と自嘲気味に語る。
福島市から自主避難した50代女性は中学3年生の長男と川崎市内のワンルームマンションで暮らす。事故直後に知人の紹介で入居した。女性は「とりあえず住む場所を確保したかった。こんなに長く住むとは思っていなかった」と振り返る。
食卓用の小さいテーブルで長男が高校受験に向け勉強をする間、女性が学校に出す書類に書き込みなどをするのは、段ボール箱の上。着替えは洗面所だ。2013年夏から神奈川県と福島県、厚生労働省に住み替えを求めてきたが「その理由では認められない」と退けられてきた。
ところが今年1月、神奈川県から「家主が契約更新を希望していない。新しい住宅を探して3月末までに出て行ってほしい」と電話通告され、結果的に住み替えが認められた。女性は「今まで認めなかったのは何だったのか。家主の都合だけでなく子供のことを考えてほしかった」と憤る。
◇行政の対応、二転三転
避難者が住み替えを求める理由は「近所トラブル」「住宅の老朽化」「家族関係の変化」が多い。福島県と協議した埼玉県の開示文書からは、それらへの対応の一端が浮かぶ。
「隣人の様子がおかしい」「子供がいじめられた」。埼玉県では2011年11月から近所トラブルを理由にした住み替え要望が出始めた。福島県は退けたが、その後も同様の要望が相次ぎ、両県は12年3月、「本人の責任でなければやむを得ない」と容認。しかし同年5月、また隣人トラブルによるストレスを訴える要望が出ると、福島県は「診断書があるからと認めれば相当の件数が該当してしまう」と拒絶に戻った。
ところが約2カ月後、福島県の姿勢が軟化する。国から見解を受けたとして「著しい不利益や危険がある場合は住み替えが可能」と、避難者が多い13都県に通知。福島県から埼玉県に「診断書を取ってほしい」と逆に求めるケースもあった。
一方、住宅の老朽化や家族関係の変化が理由の場合は一貫して厳しい対応だ。12年4月には「床が沈む」などを理由にした要望が出たが、福島県と協議の上、家主に修繕を求めるとして退けた。結婚など家族の変化を受けた要望についても認めなかった。
そもそも住み替えを判断する主体がどこかも不明確だ。避難者の住宅問題に詳しい津久井進弁護士(兵庫県弁護士会)は「長期で広域の避難に現状の制度が対応できていないのは明らか」と指摘する。
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