http://mainichi.jp/select/news/20150315k0000m040116000c.html
東京電力福島第1原発事故の避難者が住む「みなし仮設住宅」を巡り、福島県が昨年5月に供与期間の1年延長を各都道府県に通知した説明文書のうち、更なる延長の可能性を示した部分を黒塗り(非開示)にして情報公開請求に対応していたことが分かった。先の生活の見通しを少しでも立てたいとして更なる延長を望む避難者は少なくないが、行政側には復興の象徴としてできるだけ早く避難を終わらせたい意向があるのではないかと疑い反発する声も上がっている。
みなし仮設住宅は、応急仮設住宅のうち民間賃貸住宅や公営住宅などを借り上げて被災者に提供するもので、供与期間は原則2年間だが、1年ごとの延長が可能となっている。延長はその費用を負担する国と協議して福島県が判断する。県は2014年5月に3度目の延長を行い、現在の供与期限は16年3月末。今年も4〜5月ごろに更なる延長を巡り、避難者を受け入れている自治体に通知を出すとみられる。ただし16年4月以降は通算5年を超えるため、打ち切りもあり得ると懸念する避難者もいる。
こうしたことから埼玉県内で自主避難者の交流会を主催する30代の女性は14年7月、同年5月の供与期間延長に関する文書を福島県に情報公開請求した。その結果、県と自治体側の担当者との質疑応答(Q&A)を想定した「応急仮設住宅(民間借上げ)の供与期間延長に係るQ&A」と題された文書が開示されたが、10項目のQ&Aのうち6項目は黒塗りにされていた。
この文書について毎日新聞が取材したところ、内容が判明した。Q&Aの3項目めでは延長期限を16年3月末としたことを自治体側から問われたと想定し「今後の更なる延長は1年ごとに判断する」と回答。7項目めでは同年4月以降の取り扱いについて「復興状況や避難者の状況を踏まえて判断する」と回答していた。
文書は16年4月以降も1年ごとに延長する可能性があることを示唆したと読めるが、福島県は不開示理由について、請求者の女性に「未確定な情報で県民に混乱を生じさせるおそれがある」と文書で説明。県の担当者は毎日新聞の取材に「契約の実務などもあり、各自治体の担当者とは(供与期間を巡る)考え方を共有したかった」と述べる一方、「黒塗りした部分は一般論に近いが、避難者が見れば更に延長すると誤解される恐れがあった」と話した。
◇解説 見通し示さず疑心招く
「みなし仮設」など応急仮設住宅の「更なる延長」を望む人は、昨年実施された福島県の避難者意向調査で4割に達する。にもかかわらず、県は避難支援者の情報公開請求に対して「延長の可能性」を隠し、県と協議する国も「(延長の有無は)言えない状況」(昨年10月29日、参院復興特別委員会での竹下亘復興相の答弁)と、見通しを示さない姿勢に転じている。
延長と合わせて、県外への避難者は柔軟な住み替えも要望している。だが、行政側は原則認めていない。避難者からは「先行きを不透明にすることでみなし仮設からの退去を迫っているように感じる。『早く県外避難者を減らしたい』という行政の思惑があるのではないか」との疑念も漏れる。県の担当者は否定するが、一方で県内への住み替えは認めており、「みなし仮設で県外に出た人の選択肢は帰還しかない」とせかしているように受け止められている。
放射線量を不安視して帰還に踏み切れない人は少なくない。避難者の実態に詳しい福島大の今井照(あきら)教授(自治体政策)は「放射線の影響は長期間にわたる。原発避難者が安心して生活するための住宅制度が必要だ」と強調する。避難者それぞれの要望と向き合った選択肢を示すことも、復興に向けた支援ではないか。
「応急仮設住宅(民間借上げ)の供与期間延長に係るQ&A」と題された文書は、10項目のQ&Aのうち6項目が黒塗りで開示された。
0 件のコメント:
コメントを投稿