2015/03/15

宮城/仮設住宅「特定延長」避難者周知と熟慮の機会を


2015年3月15日 河北新報
http://www.kahoku.co.jp/editorial/20150315_01.html

東日本大震災の発生から4年を前に、宮城県は被災者向け仮設住宅の入居期間について、自治体が一律1年延長する現行制度に加え、入居6年目からは自治体が世帯ごとに判断する「特定延長」を導入する方針を明らかにした。

仮設住宅の入居期限は避難者にとって最大の関心事の一つであり、将来的には岩手、福島を含めた被災3県自治体の共通課題となる。期限を迎えるのは早い世帯で1年後だが、住まいの決定には熟慮と時間を要する。避難先が全国に及んでる状況を踏まえ、十分な周知ときめ細かい情報提供が求められる。

宮城県は特定延長の適用対象に、災害公営住宅の整備、集団移転や自力による住宅再建がおおむね順調に進んでいる自治体を見込む。仙台市や宮城県山元町などは県の方針を受け、特定延長に移行する姿勢を示した。災害公営住宅の建設が進むなど、生活再建に向けた一定の住宅環境が整うと判断した。

具体的な住宅再建計画はあるものの、工事の遅れなどで入居期限の5年以内に仮設住宅を出られない世帯や、移転予定地の造成工事が完了していない世帯などに限り、入居期間を1年延長する方針だ。

災害救助法に基づく仮設住宅の入居期限は原則2年で、自治体の判断で延長してきた。宮城県内で5年に延長したのは、仙台、石巻、気仙沼など14市町で、期限は2016年3月から17年3月まで各世帯で異なる。特定延長の導入方針に対し、住宅の再建方針が決まらない被災者らからは、不安と不満を訴える声が上がる。経済的理由に加え、転居先での人間関係、コミュニティーに懸念を抱くことも容易に推測できる。行政は個々のケースを把握して、相談、支援体制を強化する必要がある。

東日本大震災と福島第1原発事故に伴う避難者は、復興庁の集計(2月12日現在)で約22万9000人に上る。このうち17万3000人余りが岩手、宮城、福島の被災3県で暮らし、約5万6000人は3県を離れて全国各地に身を寄せている。宮城県は2月、全3410世帯を対象にした県外避難者ニーズ調査(回答率30.0%)の結果をまとめた。前年の調査対象は全4098世帯で、この1年間で約700世帯減少している。

今後の生活予定地で最も多い回答は「現時点で決まっていない」の46.4%で、宮城県に帰郷する意思を示したのは30.0%、希望時期は1年以内25.9%、3年以内27.3%だった。住居形態の希望では、災害公営住宅が前回より19.0ポイント増えて55.4%となった。調査結果を受けて県は「将来の住まいを思い悩む避難者への相談体制充実がより重要になる」と判断した。特定延長導入も見据えて、新年度には県外支援員を増員し、新たに全国5カ所程度に支援拠点を設ける。

震災前の居住自治体からの情報提供は通常、正式決定後となる。県外避難者には、新聞などを通じた情報に触れる機会が少ないことを考慮した目配りが欠かせない。


2015年03月15日日曜日

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