[「子どもたちのために」安心して暮らしていける情報は必要だけれども、安心のものさしは、それぞれの親が判断するしかないのです。放射線の影響にしきい値がないのですから、少なければ少ない方がいいこと、日々の暮らしの中でバランスをとりつつ、あくまでも、予防の観点に立ち、生活のなかで何に気をつけていくといいのか、そこを伝える必要があるでしょう。中でも、内部被ばくについては、まだまだわかっていないことが多いのだから、よけいに気をつけるべきであることは伝えるべきでしょうし、人間がこの地球上で共存してきた自然放射線と事故のために拡散された放射性物質とを一緒に語るようなことのないようにしたいと思います。これらは、情報を受け取る時、提供する時、気をつけている点でもあります。]
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東京電力福島第一原発事故後、放射線について知ろうと南相馬市の母親らが医師と続けてきた勉強会の内容が冊子になった。基礎的な知識や身近な疑問を、わかりやすい言葉で説明している。英語版も完成した。
冊子をつくったのは「ベテランママの会」のメンバー5人。事故後の混乱と放射線への不安のなかで、「子どもたちのために」と、子育てが一段落した高校の同級生らが集まった。
震災後、南相馬市立総合病院で診療を続けてきた東京大学医科学研究所の坪倉正治医師(血液内科)を招き、2011年12月に子どもや保護者のための勉強会をスタート。他の医師も加わり、月に1、2回、放射線について話をしてきた。
子どもたちは「ペットにさわっていいですか」「雪をなめていいですか」と身近な質問をぶつけた。副会長の渡辺育美さん(54)は「(坪倉医師の説明は)わかりやすい言い方で、すっと頭に入ってきた。同じ目線でじかに話ができるのがよかった」と振り返る。
しかし、質問はいまもあまり変化がないという。坪倉医師は「放射線のことを言い出せない状況になっていて、事故から3年たってやっと情報にたどりついたというお母さんもいる。自分を否定されたり、自信を失ったりせずに選択をしていく助けになれば」と話す。
冊子は外部被曝(ひばく)と内部被曝の違い、ベクレルとシーベルトの違いなど基本的な知識のほか「放射線は他の人にうつりますか?」「水道水は大丈夫ですか?」といった疑問に答えている。
同市でのべ約3万人が受けた内部被曝検査で13年現在、9割を超す市民からは放射性セシウムが検出されず、高い数値が出た人は汚染された食品を食べ続けていたことも説明している。
監修は東京大学大学院理学研究科の早野龍五教授が務めた。
同会によると、日本語版は初版2万冊が学校や企業などに配布された。英語版もインターナショナルスクールや国際交流団体などから発注があるという。問い合わせは同会(beteranmama0808@gmail.com)。
http://www.asahi.com/articles/ASGDD7K2MGDDUGTB017.html
2014年12月14日
朝日新聞
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