[原木しいたけのほうがどれだけ味わいがあるかはよくわかっているつもりです。けれども、移行値がきわめて高いしいたけの場合、原木を他県産に切り替えたり、菌床栽培に切り替えたりしても、基準値より相当下回るとはいえ、福島〜東北、関東に広がる汚染のある地域では、数Bq/kg〜20Bq/kg前後の数値が見られることはよく知られています。だからこそ、子どもたちのために安全な食材を求める人たちは買えないのです。(北海道や中国地方で栽培していても、2〜3Bq/kgほど検出されていたりするデータも見ます。そのくらい厳しいのが、この汚染状況下でのしいたけ栽培なのだと思います。)
未だ収束しない福島第一原発のある近県での栽培を支援することと、他の道を探ることと、どちらがよりベターなのか、生産者、支援者、消費者、流通業者、行政など、関係者で考え合っていくことはできないでしょうか。「風評被害」ではない、わずかでも汚染という「実態被害」がある以上、「作って補償」ではない形で、ベターな方法を探っていけることを願っています。]
あぶくま抄・論説
東京電力福島第一原発事故の影響で出荷が制限されていた地区の原木シイタケ生産が動きだした。放射性物質の基準値を下回った伊達市の3農家と新地町の1農家が7月から施設栽培で出荷が可能となった。県内の店頭にも原木から育ったシイタケが出回っている。激減した原木シイタケの生産農家が今後、意欲を持って取り組めるよう関係機関は支援を続けてほしい。
原木シイタケは、伐採した落葉広葉樹のコナラなどに菌を植え付けて森の中の露地で管理、生産する。天然物に近く肉厚で歯応えがよい。香りもあって消費者から好まれてきた。特に本県は原木の成長に適した気候などのため原発事故前は原木の県外供給量が全国一で、24都府県で1位を占めるほどだった。
他の作物生産には不利な中山間部が露地栽培に向いており、農地面積が限られている農家にとって原木シイタケは貴重は農産物となっていた。しかし、原発事故で森林が汚染された。放射性物質を含む原木を使用できなくなった上、森の中に置けなくなったため、露地栽培による原木シイタケは大きなダメージを受けた。17市町村で露地栽培が制限されており、農家の苦悩は察するに余り有る。
県は原木シイタケの生産拡大に向けて栽培管理マニュアルを作り、放射性物質低減対策をまとめた。汚染された森林での露地栽培に代わって施設栽培を進めた。伊達市の農家では、原木を秋田県産に切り替えた上、ビニールハウスを改造したり放射性物質を含まない土を敷いたりした。
おがくずなどを使用する、別の生産方法である菌床シイタケは、温度や湿度などを管理する施設の建設に多額の費用がかかるため、ためらう農家も多いようだ。ビニールハウス内で原木シイタケの出荷を再開した同市霊山町の農家の一人、斎藤憲一さんは、これまで築いてきた流通経路で地元の消費者に届けている。
ただ、後継者が見込めない農家などでは、原木シイタケでも施設改造などに費用がかかるため再生産に踏み切れないケースもあるようだ。東電が賠償を進める際には、意欲を示す農家にしっかり向き合ってほしい。
汚染が心配されるため、目の前の山にある原木を伐採できない地区がある。他県産の原木を使うしかない農家は歯がゆい思いだろう。原木に含まれる放射性物質の濃度を推計する検査機器の開発を急いでほしい。菌床を含む本県産のシイタケ全体に対する風評被害を拭い去る取り組みも続けていきたい。
2014/12/18
http://www.minpo.jp/news/detail/2014121819894
福島民報
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