2014/12/05

衆院選 ここを問う…福島の苦悩

選挙を前に、社説で、「子ども・被災者支援法」のことを一部でもとりあげているので、あげておきます。原発事故の被災者を救うはずの法律が、ほとんど骨抜きになったまま、放置されている現状に対して、もっとメディアが取りあげて欲しいところです。


 大震災から3年9カ月。県民の16人に1人、12万人以上がいまだに住み慣れた土地と家に戻れず、不自由な避難生活を送る。うち約4万6000人は県外への避難者だ。
 全村避難が続く飯舘村では先月、住民の約半数2800人余りが賠償の増額を求めて政府の原子力損害賠償紛争解決センターに、裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てた。仮設住宅で避難生活を続ける申立人の女性は「今は難民だと思っている」と取材に答えていた。
 福島を第一声の地に選んだ党首もいたが、選挙戦全体を通して福島の救済・復興策が熱心に語られているとは言い難い。いつになったら帰れるのか。帰れないならどこに定住するのか。避難者が漂流せざるを得ない状況を食い止め、一刻も早く生活再建の道筋を示すべきだ。
 政府は昨年末、福島復興の加速化方針を公表し、全員帰還という従来の目標を断念した。長期間、避難指示の解除が見込めない地域があり、現実的な方向性ではある。だが、かつての場所に戻らないとしたら、新たに働く場所や住居、一定の賠償が必要だ。それを支援すべき政府は、十分な役割を果たせていない。
 典型が賠償問題だ。解決センターは政府機関だが、東京電力は和解案の拒否を繰り返している。浪江町民1万5000人が申し立てた事案でも、解決センターが示した精神的賠償額を月額5万円増額する和解案に東電は今も応じていない。
 賠償は帰還にも影を落とす。田村市や川内村の一部で今年、避難指示が解除されたが、住民の賛否は割れた。避難指示の解除から1年後をめどに慰謝料の支払いが打ち切られるのも一因とみられている。
 あくまで帰還を目指すのか、あきらめるのかは、被災者の世代や家族構成、特に幼い子供の有無などによってさまざまだ。避難の期間が長期化すればするほど、被災者の意思は複雑に分かれる。
 こうした中、「子ども・被災者生活支援法」が一昨年、議員立法で提案され、全会一致で成立した。居住者、帰還者、避難者いずれの選択も尊重し、支援するのが柱だ。
 帰還を前提とする官僚的な手法に対し、政治家がノーの意思を示したものと被災者は受け止めた。だが、実際には法律はほとんど生かされていない。特に住宅支援などで住民の要望は切実だ。福島の人々に、新しい明日が来ることを示す役割は、政治をおいてほかにない。

http://mainichi.jp/opinion/news/20141205k0000m070119000c.html
毎日新聞
2014年11月5日 社説

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