2015/03/04

「いつまで続ける」牛の放射性セシウム「全頭検査」 “基準値超ゼロ”に年間1億円の自治体も 

(全頭検査を継続しないとすれば、モニタリング検査の検体をどのように抽出するかが問題ですが、汚染された検体を適確にとらえられるような抽出のしかたが求められ、抽出する機関への信頼がなければ、安心はできません。いずれにしても、基準値が100Bq/kgでそれ以下であれば流通してしまう中では、どこに安心を見いだせばいいのか悩ましいです。 子ども全国ネット)
 
2015.3.4 産経新聞
http://www.sankei.com/premium/news/150304/prm1503040005-n1.html


東京電力福島第1原発事故後、放射性セシウムに汚染された牛肉が見つかったことで始まった牛の全頭検査が今も続いている。自治体などが主に風評被害対策として独自に行っているもので、放射性セシウムが検出されることはほとんどない。宮城県の年間約1億円をはじめ多額の費用がかかっており、専門家は「継続が必要かそろそろ考える時期では」と指摘している。

“安心”を買ってくれる

原発事故後、食の安全を守るため全国の自治体は放射性セシウムのモニタリング検査を実施。牛肉については、原発から半径20キロ以内の牛の出荷を禁止。それ以外の地域はモニタリング検査を行い出荷していた。


しかし、事故から約4カ月後の平成23年7月、放射性セシウムに汚染された稲わらを食べたことが原因で基準値超の放射性セシウムを含む牛肉が全国に流通していたことが発覚。自治体が独自に全頭検査を始めた。

現在も牛肉の出荷制限がかかる福島、岩手、宮城、栃木の4県では、自治体が定めた「出荷・検査方針」に従い検査された牛は出荷が可能だ。方針は、農家ごとに検査する「全戸検査対象農家」とした場合も、「全頭検査するよう努力すること」としており、実際は出荷する全ての牛の検査が行われている。

岩手県の26年度の検査費用は約7200万円。27年度は若干減るが、全頭検査は継続する。農林水産部流通課は「全頭検査をすることで消費者は安心して岩手の牛肉を買ってくれる。風評被害対策として必要」。福島県の26年度の検査費用は約6000万円、27年度も同様の予算を見込む。農林水産部畜産課は「検査しないと福島の牛は買ってもらえない。出荷制限が続く以上、全頭検査は不可欠」。同様に26年度の検査費用として、宮城県は1億円、栃木県も8000万~1億円をそれぞれ負担しているという。

一方、出荷制限がかかっていない自治体からは「やめたいがやめられない」との声も上がる。

松阪牛で知られる三重県の26年度の検査費用は1500万円、27年度は1100万円を見込む。農林水産部畜産課は「スーパーなど流通から検査証明書を求められている。他の自治体が続けている以上、検査をやめるわけにいかない」。

飛騨牛の生産地である岐阜県の26年度の検査費用は約6000万円。このうち県の負担は約4000万円で、残りは県農協中央会の負担。27年度も同規模の予算を組む。農政部畜産課は「ブランド維持には検査が必要。費用は過大な負担になっているが、やめるのは難しい」。

全国から銘柄牛が集まる東京都では、検査費用約1億円のうち約6000万円を都が負担している。都中央卸売市場政策課は「出荷制限地域の牛も受け入れており、検査する牛としない牛がいると『検査するのは危ないから』と思われ風評被害となる恐れもある。検査する以上は全頭検査せざるを得ない」。
結局、消費者が負担する“不条理”

24年11月以降、いずれの自治体も基準値超はなく、ほとんどが検出限界以下という。食品リスクの経済分析を専門とする近畿大学農学部の有路昌彦准教授は「これまでの検査で検出限界以下が確認されているなら、安心を得ることを目的とした検査がもはや必要とは思えない」と指摘する。

東京電力によると、原発事故に伴う風評被害対策のために必要な経費は損害賠償の対象といい、牛肉の検査費用も地域によっては支払われる。ただ、賠償金のもとになるのは国の税金や電気料金で、結局は消費者が負担しているといえる。

有路准教授は「自治体がやるべきことは他にもある。全頭検査が必要なのか、検討する時期なのではないか」と話している。


検査は「3カ月に1回」も

放射性セシウムの基準値は、一般食品は1キログラム当たり100ベクレル、水は同10ベクレル、牛乳・乳児用食品は同50ベクレル。国は放射性セシウムが基準値を超える可能性のある品目を対象に重点的に検査を実施している。

 牛肉については「飼養管理の影響を大きく受ける食品」として、出荷制限がかかる自治体に「農家ごとに3カ月に1回検査すること」などを求めている。





放射性セシウム検査のため牛肉を細かく切り刻む福島県の職員
=福島県農業総合センター

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