2016/08/13

約1万トンを処分 韓国禁輸の影響で

2016年8月13日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160813/k00/00e/040/216000c

宮城県漁協は、全国一の生産量を誇る県産の養殖ホヤを処分するための水揚げを進めている。東京電力福島第1原発事故を理由に、一大消費地の韓国が輸入を禁止している影響から販売先を確保できないためで、約1万トンのホヤを処分する方針だ。東日本大震災後に養殖を再開して約5年。漁師らはやりきれない思いを抱きながら、食べごろに育ったホヤの水揚げを続けている。
【百武信幸】

7月7日朝、女川町の漁師の漁船に乗せてもらい、町内の浜を出港した。約1キロ離れた内湾で、漁師らが海中から養殖用のロープを引き揚げると、赤くてゴツゴツした鈴なりのホヤが揚がった。大きさは平均して握り拳ほどだが、中にはソフトボール大に丸々育ったものもある。中身はマンゴーのように黄色く、船上でごちそうになると、潮のほのかな苦みがかむほどに甘みに変わった。漁師の木村義秋さん(64)は「一番おいしい大きさに育ったのにもったいない。安全も確認されているのに」と嘆く。

県漁協などによると、2011年の震災前のホヤの生産量は年間約9000トン。津波で養殖いかだが壊滅的な被害を受けたものの、各漁業者は生き残った県内の種苗を購入し、同年から養殖を順次再開した。今年度の生産量は震災前の水準まで回復する見通しだ。

ところが、県産ホヤの7〜8割を消費してきた韓国が13年、原発事故を理由に宮城など8県の水産物の輸入を禁止し、現在もホヤの販売先の確保ができない状況が続く。ホヤは成長して食べごろの3〜4年を過ぎると、ロープから落ちて海を汚すという。県漁協は市場価格の維持も考慮して処分を決定し、7月から水揚げを始めた。

県漁協は9月までに約1万トンのホヤを水揚げし、堆肥(たいひ)などにする方針。処分費用は東電に請求するという。

水揚げ後、処分される養殖のホヤ:宮城・女川 


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