2016/08/08

あぶくま抄・論説 【側溝汚泥除去問題】早急に対応策示せ

2016年8月8日 福島民報
https://www.minpo.jp/news/detail/2016080833528

東京電力福島第一原発事故で汚染された道路側溝の汚泥について、国は除染基準を下回った場合でも国費で除去する方針を固めた。ただ、除去の範囲や基準、実施主体、処分法など明確でない部分が多い。財政措置や除去した堆積物の中間貯蔵施設への搬入を要望してきた県内市町村の声に応え、国は一刻も早く詳細を明らかにすべきだ。

県内の除染は放射性物質汚染対処特別措置法に基づき、国直轄で進める除染特別地域と市町村が実施主体となる汚染状況重点調査地域に分かれる。汚染状況重点調査地域は地上1メートルの空間放射線量が毎時0・23マイクロシーベルト以上の39市町村が対象となった。公共施設や住宅など生活に身近な除染は着実に実績が上がっているが、道路側溝の汚泥や森林などは後回しにされた。

原発事故から5年が過ぎ、放射性物質の自然減衰などで除染の基準を下回る地域が出てきている。郡山市の場合、除染基準を下回る市内の側溝は延べ1185キロに達し、汚泥の量は約1万8千立方メートルに上ると試算されている。処分費用は約24億円を見込む。措置法に基づく除染ならば、市が実施しても国費が支出されるが、自主財源では対応が難しいという。

汚染状況重点調査地域に指定された市町村は、当初予定していた除染が終了していないのにもかかわらず、除染基準を下回ったという理由で国費が当てにならず、除去作業に着手できないできた。市町村や住民は時間をかけてでも全てを除染するのが当然と考えていたはずだ。特措法の基準では収まらない新たな課題に対して、国の動きは緩慢と言わざるを得ない。

極端に言えば、基準に当てはまる除染の対象も放っておけば作業をしなくてもよくなるという論理が成り立つ。「自然減衰を待っているのでは」との疑念も生まれる。今の対応は到底容認できない。地元の強い要望を受け、環境省はようやく重い腰を上げた。財源は今年度中に事業着手できるよう復興庁と協議して復興関連交付金の活用を検討する。実施主体は、それぞれの道路管理者がすべきとの方向性も打ち出した。

それでも、いわき市は独自に除去すると決めた。清水敏男市長は「市民の安全、安心を確保するため」と国の緊張感のなさを指摘し、費用は国に求めるという。原発事故直後、郡山市は特措法の成立を待たずに学校の除染を開始した。混乱期は過ぎたというのに、いまだ国は現場の実態に追い付けず、地元の要請に応えていない。(安斎康史)

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