2016/08/10

2人の副大臣 「問題言動」に甘い政権のおごり

2016年8月10日 愛媛新聞
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201608106916.html

これは露骨な「論功行賞」人事ではないか。先日発足した第3次安倍再改造内閣で、自民党の木原稔、礒崎陽輔の両氏がそれぞれ、財務と農林水産の副大臣に就任した。

ともに昨年、報道の自由や国会審議を軽視する言動が問題になった若手議員。1年もたたないうちに要職で起用するのは、安倍晋三首相が彼らを全く問題視していなかった証拠だ。むしろ逆に高く評価している可能性も否定できない。

参院選が勝利に終わったこともあり、「ほとぼりが冷めた」という判断かもしれない。「世論や報道機関の反発など気にしない」と言わんばかりの安倍政権の「おごり」の姿勢に、猛省を促したい。
木原氏は昨年6月、自らが代表を務める党所属若手議員らの勉強会で、報道機関に圧力をかける発言が相次いだことが問題になり、1年の役職停止処分を受けた。首相は「党本部で行われた勉強会であり、最終的には私に責任がある」と謝罪した。

ところが、党はわずか3カ月後の10月に処分期間を9カ月も軽減。木原氏は党の文部科学部会長に就任した。安全保障関連法が成立し、国会審議への影響がなくなったと判断したためとみられる。首相も結局、何ら責任を取らなかった。

木原氏は11月、首相が会長を務める超党派議員連盟「創生日本」の事務局長にも就任した。重用ぶりが際立つ。

党文部科学部会長としても、今年7月、教育現場で政治的中立性を逸脱する教諭の情報提供を自らのツイッターで呼び掛けた。「子どもたちを戦場に送るな」と主張する教諭を逸脱事例として挙げるなどの姿勢が問題になった。今回の抜てきをみれば、その言動は首相の意に近いのではとの疑念が湧く。

首相補佐官だった礒崎氏も昨年8月、安保関連法案を巡っての「法的安定性は関係ない」発言や、法案審議を「9月中旬には終わらせたい」との参院軽視発言が批判を浴びた。10月の内閣改造で首相補佐官を降りたものの、今年1月には参院行政監視委員長に就任していた。

参院選前の6月には、民進党の岡田克也代表を「言うことも顔も共産党になってきた」と発言。資質を問われる言動が今も続くことにあぜんとする。

また、原発事故による被ばくを心配する人たちを「反放射能派」と呼び、国が定めた除染基準について「何の科学的根拠もない」と発言した丸川珠代前環境相も五輪担当相に「横滑り」した。実質的な留任は、福島県民の苦悩や国民の怒りに対する政権の鈍感さの表れだろう。

安倍「1強」状態はさらに続く見通しだ。木原、礒崎両氏らの厚遇で、他の議員たちが追随し、首相の意をくんだ「暴言」がエスカレートしていくのではないかと危惧する。そしてその「暴言」が重なって、いつの間にか当たり前になる。そんな社会にさせてはならない。

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