2016/08/29

汚染土埋設図 住民配布用に寸法なく 福島市

2016年8月29日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160829/k00/00m/040/113000c 


東京電力福島第1原発事故に伴う住宅除染で出た汚染土を現場保管した際、福島市が住民に渡す見取り図に埋設場所の寸法が記されていないことが分かった。この図を基に土地の購入者が自宅を新築後、建物の下に汚染土の塊があることが判明。寸法のない見取り図は既に約6万6000点が交付されており、汚染土の現場保管が長引く中、同様の事態が生じる恐れが出てきた。

福島県の住宅除染では福島など5市村が主に現場で保管し、他の自治体は主に仮置き場で保管。5市村のうち福島市だけは全て寸法のない見取り図を土地所有者に渡し、他は寸法入りの図を渡すなどしていた。見取り図は通常、土地取引の際に旧所有者から購入者に渡される。

福島市の会社員は2013年11月、市内の除染済みの土地約300平方メートルを購入。埋設場所の見取り図と除染前後の放射線量を記した市の文書「モニタリング票」を旧所有者から引き継いだ。会社員は14年9月、見取り図に基づいて敷地北東部にある埋設場所を避けて自宅を新築した。

一方、市は仮置き場を設置した地区ごとに、現場保管している汚染土を搬出。このため15年10月、会社員宅の敷地を掘り起こすと、汚染土が入ったフレコンバッグ6個(計6立方メートル)が建物の北東部の下に入り込んでいることが判明した。建物が傾く恐れから、4個は今も搬出できていない。

会社員が今年5月、この土地の除染について情報開示請求すると、寸法の入った別の見取り図が開示された。この図の埋設場所は、寸法のない見取り図より南西側(中央側)に数十センチ寄っていた。会社員によると、実際の埋設場所はさらに中央に寄っているという。

市の担当者は寸法のない図について、環境省の除染ガイドラインに基づき線量を示すのが目的で、埋設場所はあくまで目安と説明。一方、寸法入りの図は放射性物質汚染対処特別措置法に基づき保管場所を記録するため作製が義務づけられ、根拠が違うとしている。

市の担当者は取材に「短期間での搬出が前提で、ここまで長引き土地取引や建物建設に至るとは思わなかった」と説明。交付予定の約2万6000点の図を寸法入りに切り替えることを検討し、交付済みの図は不正確と周知することも考えるとしている。【日野行介】

福島市が保管していた寸法の入った見取り図(左)と、土地所有者に渡した見取り図。
庭(3)は放射線の測定地。左側の図では埋設場所が南西側に寄っている=日野行介撮影

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