2016年8月9日 建設通信新聞
http://www.kensetsunews.com/?p=70892
環境省は、東京電力福島第一原子力発電所事故後の除染で出た福島県内の除去土壌について、公共事業の資材としての再生利用に向けた実証事業に着手する。南相馬市の東部仮置き場にある大型の土のう袋約1000袋(1000m3)の除去土壌を使い、同仮置き場のうち約2haで、除去土壌を前処理・品質調整処理した上で、盛り土を再生利用の用途例として試験施工する。9月中には実証事業の事業者を決め、10月に契約を結ぶ予定だ。
実証事業では、再生資材化した除去土壌の安全な利用を段階的に進めるため、再生資材化する工程上の具体的な放射線に関する取り扱い方法や土木資材としての品質を確保するためのあり方を検証する再生資材化実証試験と、再生資材化処理した土壌を使ったモデル実証試験により技術的検討を実施する。事業によって放射線に関する安全性確認や再生資材の管理方法など再生利用の促進に向け技術面の整備を進める。
具体的には、除去土壌を再生資材として使うために、除去土壌の受け入れ、破袋、異物除去、放射能濃度による分別、利用用途に応じた品質調整などの再生資材化処理について、工程上の放射能の収支や放射能濃度のばらつきの評価によって、再生資材製造工程一連のスクリーニング技術確立に向け検証し、課題を評価をする。
周辺環境や作業環境への影響に対する扱いなど、放射性物質を含む土壌の取り扱いにかかわる被ばく管理計画を立案する。盛土を再生利用の用途例として、再生利用する際の現場の取り扱い計画も立案し、モデル実証試験によって評価する。
また、公共事業発注者や地域住民、公共事業の施工に当たる作業員などの関係者の理解醸成、社会的受容性を向上させる目的で、見学会や説明会も開く。実証事業を通じて、再生利用本格化に向けた環境整備に取り組む。
実証事業で得られた成果は、環境省が2018年度末までに作成する「再生利用の手引き(仮称)」に反映させる。手引きは、公共事業発注者や施工者が一般的に再生利用できるよう、再生資材を使った工事の計画・設計、施工、供用の一連のプロセスにおける留意点を整理する。
実証事業で使う除去土壌の放射能濃度は、幅があるものの、平均値で1㎏当たり約2000ベクレルある。事業は電離放射線下での作業となることから、除染電離則や同則ガイドライン、特定線量下業務ガイドラインなどの関係法規を順守する。また、適切な被ばく線量管理の実施に向け除染関連業務共通仕様書を準用、放射線管理責任者も選任する。
事業者は企画競争で選定する。9月8日まで企画書を福島環境債税事務所で受け付ける。事業の予算総額は5億0024万1000円(税込み)以内。実証事業の履行期限は17年3月31日。
福島県内の除去土壌は、大熊、双葉両町の中間貯蔵施設で保管し、30年以内に県外で最終処分する。貯蔵量は最大2200万m3。環境省は除去土壌の再生利用を進めて、県外最終処分場に運び込む量を減らす。減容化技術の開発にも注力し、県外最終処分場の施設規模を縮小させる。
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