2016/10/31

女性に多い甲状腺がん 検査の精度向上で発生率増加

2016年10月31日 朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASJBX62T1JBXUBQU00H.html 

甲状腺はのどぼとけの下方にある縦4~5センチの蝶(ちょう)のような形をした臓器で、体の代謝をつかさどる甲状腺ホルモンを作っています。甲状腺の悪性腫瘍(しゅよう)の一つが「甲状腺がん」で女性に多い病気です。

組織型により主に5種類にわけられます。成熟した細胞から生じるがん(分化がん)のうち、「乳頭がん」(日本人の甲状腺がんの90%)は、各年齢層にみられ、進行が遅く、10年生存率が約90%と他臓器のがんに比べ予後良好です。「濾胞(ろほう)がん」(同5~8%)は肺や骨などへ転移する例もありますが、大部分は予後良好です。

一方、「未分化がん」は細胞が非常に未熟で悪性度が高く、急激に進行する極めて予後の悪いがんです。発症はまれですが高齢者にみられます。「低分化がん」は、分化がんと未分化がんの間の性質を示します。「髄様(ずいよう)がん」は、カルシトニンというホルモンを作る細胞から生じる特殊ながんです。3分の1が遺伝性のがんとされています。

甲状腺がんでは、しこり(結節)ができるだけで、痛みなどの症状はなく、進行すると声がれなどが現れることがあります。ただ、未分化がんでは、急激に腫瘤(しゅりゅう)が増大し、痛みや発熱などの全身症状を伴います。

診断には、血液検査を行い、超音波検査(エコー)で結節の大きさや性状を評価した後、穿刺(せんし)吸引細胞診(エコーで見ながら結節に細い針を刺して細胞を取り、顕微鏡で調べる検査)を行います。

近年、世界的に甲状腺がんの発生率が増えていますが、死亡率はそれほど増えていません。これは、超音波検査の普及や細胞診の精度向上で、1センチ未満の「微小がん」(ほとんどが乳頭がん)の発見が増えたのが一因です。最近の研究結果も踏まえ、危険度の低いタイプの微小がんは、十分に説明し同意を得た上で、すぐに手術はせず、慎重に経過観察するという選択肢が提唱され始めています。
新潟大学大学医歯学総合研究科 山田貴穂助教(血液・内分泌・代謝内科)

<アピタル:医の手帳・甲状腺がん>
http://www.asahi.com/apital/healthguide/techou/

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