2016/10/21

汚染土の仮置き場31カ所、放射能測定できない恐れ/福島

2016年10月21日 朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASJBL5DN3JBLUTIL02K.html 

東京電力福島第一原発事故の除染作業で出た汚染土の仮置き場について、会計検査院が調べたところ、福島県内の31カ所で、土から出た水の放射性物質の濃度を測定できない恐れがあることがわかった。設計では、敷地の中央部が盛り上がり、水が脇のタンクに流れて測定できる仕組みだが、土の重みで中央部が沈下し、沈んだ部分に水がたまってしまう可能性があるという。

実際に地盤が沈下したり、中央部に水がたまったりしているかは確認できていないが、検査院は沈下の兆候があった場合の対応を検討するよう環境省に求めた。

仮置き場では、汚染土は袋に入れられ、積み上げて保管されている。袋に遮水性がなければ、土地に傾斜をつけ、外側にあるタンクに水を集めるよう環境省の内部基準で定められている。タンクに水がたまっていれば、定期的に放射性物質の濃度を測定する。

検査院は、2012~15年度に汚染土の搬入が完了した、環境省設置の仮置き場106カ所のうち、34カ所を調べた。遮水性のない袋が使われ、5段以上積み上げられた仮置き場を選んだ。

すると、地盤が軟らかいことなどが原因で、34カ所すべてで地盤が沈下する可能性があった。さらに、沈下によって中央部にへこみができ、測定ができなくなる恐れのある仮置き場が、5市町村で計31カ所あった。田村市に4カ所、川俣町に15カ所、楢葉町に3カ所、浪江町に5カ所、飯舘村に4カ所だった。31カ所の造成工事費は計41億6千万円。時間が経過するほどへこみが深くなる可能性は高くなるという。

環境省は11年の事故発生後、3年をめどに撤去される前提で仮置き場を設計した。このため、農地などの軟弱地盤でも沈下を防ぐ地盤改良などはしていない。将来は原則、農地などに戻して地権者に返す予定だ。

環境省は「仮に沈下しても水は外に漏れ出さない構造になっているので、いずれはタンクに集まる。水の管理を徹底するとともに、現在はなるべく遮水性がある袋を使うようにしている」としている。(田内康介、力丸祥子)
放射性物質の濃度が測定できない可能性があると指摘された汚染土の仮置き場
=福島県内、伊沢健司撮影

■解消めど立たず

検査院の指摘で、4カ所の仮置き場で放射性物質の濃度が測定できない恐れがあるとされた福島県飯舘村。福島市に避難し、定期的に自宅の様子を見に帰る佐藤俊雄さん(68)は、「帰還後、米づくりの再開を楽しみにしている人もいる。もし水がたまっていたら、思わぬところからあふれ出しはしないか。次から次へと不安が消えない」と口にした。

同村の大半は来年3月、避難指示が解除される予定だ。ただ、積み上げられた汚染土の中間貯蔵施設への搬出は進んでおらず、仮置き場の解消のめどは立っていない。

来春、息子や孫とともに3世代7人での生活を始めるという女性(79)は「黒い袋の山を見るとため息が出る。当初は2、3年でなくなると思っていたのに」。問題が指摘された仮置き場について「元々は田んぼだったところも多い。長期間、置いていたからそうなったんでしょうか」と心配する。

避難指示解除から1年が過ぎた楢葉町。帰町者は約1割にとどまるが、住民が町内の仮置き場の管理状態を点検するための監視活動を続けている。同町では3カ所で問題が指摘された。

監視員を務める新妻敏夫さん(67)は「監視活動では、環境省から集水タンクの放射性物質濃度の測定値などを教えてもらう。しかし、仮置き場の仕組みに不備があっても、私たちではチェックできない」と困惑する。来春には小中学校が町内で再開する予定だが、子どもと親が帰還をちゅうちょすることを心配する。

福島県内には、自治体が設置したものも含めると、千カ所以上の仮置き場がある。同様の現象が発生する恐れはないのだろうか。

検査院が調査対象にしなかった環境省の仮置き場は、遮水性がある袋を使ったり、比較的重さもなかったりすることから沈下の影響は少ないとみられる。また、県の指針では軟弱地盤では沈下対策をとるように求めており、自治体設置の仮置き場が指針に沿うなどしていれば問題は生じにくいという。

例えば、ある町の仮置き場では、遮水性のある袋を使い、さらに地盤が沈下しにくくなるように砂利を敷いている。別の市では、3年間で仮置き場が撤去されないことも見越して、地盤が緩い場所には硬化剤を入れるなどの対策を取っている。(伊沢健司、長橋亮文)



0 件のコメント:

コメントを投稿