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「震災、原発事故後の心の健康を巡る問題は、おそらく二極化が進んでいる。復興の進展に伴い元気を取り戻す人がいる一方、悪いまま取り残されている人もいる」。福島医大ふくしま国際医療科学センターの一部門「放射線医学県民健康管理センター」で健康調査部門長を務める前田正治教授(56)は言う。
◆依然高いうつ病懸念
◆依然高いうつ病懸念
放射線医学県民健康管理センターが県からの委託を受けて担う県民健康調査。甲状腺検査に注目が集まりがちだが、被災者の心の健康度や生活習慣も調査対象だ。災害精神医学が専門で2013(平成25)年10月に福島医大に移った前田氏は、県民の心の調査に取り組む。
県民健康調査のうち、原発事故に伴い避難区域が設定された地域などの高校生以上の住民約18万7千人の心理的状況を調べた調査では、うつ病などが懸念される一定の基準を超えた人の割合は7・7%(14年度調査)だった。震災後年々改善傾向にあるが、平時の全国平均(3%)と比べると依然高い。
田氏には非常に気掛かりな点がある。全体として放射線への不安は年々下がっている一方で、放射線の遺伝的な影響を心配する人がいることだ。「あまりに非科学的だ」
◆放射線の影響
将来の子どもや孫などへの放射線の影響を巡っては、広島、長崎の被爆者を対象に大規模に追跡調査が行われている。
前田氏は「被爆者でもほぼ心配がないことが分かっているが、そのことは知られていない。広く知られているのは原爆が投下された際の視覚的なイメージであり、恐怖の源になっている」と指摘する。
「説明がつかない不安が存在する。科学に基づき説明していくことが必要だが、放射線を巡る不用意な言葉に深く傷つく人がいると理解することも大事だ」
職員が行き来する福島医大の放射線医学県民健康管理センター。 年内にも医大構内に建設中の施設に移る予定だ |
◆在り方議論
震災、原発事故から5年半。県民健康調査を今後どう進めていくべきか、在り方の議論が始まっている。
何の調査に重点を置くかも、検討材料の一つだ。前田氏は「心の健康度を巡っては、県民健康調査の他の調査項目と比べても、かなり長い期間の調査を要することになるだろう」と語る。
放射線医学県民健康管理センターの阿部正文センター長(69)は「県民の健康の見守りのため当面続ける方針に変わりはない」とした上で、こう述べた。「県民健康調査を巡ってはさまざまな意見があり、今後の在り方については議論されていくだろう。われわれは専門家として、県から意見を求められれば述べていくつもりだ」
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