2016/10/06

住宅無償提供打ち切り 「帰りたくても帰れない」 千葉で自主避難者交流会 /福島

2016年10月6日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20161006/ddl/k07/040/083000c


 不安、不満の声相次ぐ


東京電力福島第1原発事故の自主避難者を対象に、県が実施している住宅の無償提供が来年3月末で打ち切られる。新たな家賃補助制度が始まるものの、支援を受けるには所得など一定の要件を満たす必要がある。経済的に苦しかったり、避難先での生活が定着していたりする世帯も多く、自主避難者は難しい判断を迫られている。(橋口正)


「家賃の半額と言っても上限3万円では市内で家族6人で住む家は探せない」「引っ越し費用や敷金などで初期費用補助額(10万円)を超えてしまう」。


千葉県松戸市にある避難者向けの交流サロン「黄色いハンカチ」で8月下旬にあった交流会。福島県生活拠点課の担当者らによる新制度の説明に、参加した千葉県内に避難する住民ら約40人から不安と不満の声が上がった。同県には、少なくとも約300世帯が自主避難している。


福島県による家賃補助制度は、来年1月から2018年3月末までは家賃の半分(最大月3万円)、19年3月末までは3分の1(同2万円)を補助することなどが柱。だが、世帯所得を月額21万4000円以下とするなど一定の要件がある。


当初、発表された内容に比べて収入要件などが緩和されているが、それでも対象者は限られる。いわき市から千葉県館山市に避難している男性(64)の希望は、補助対象にならない公営住宅への転居だ。「自主避難者は金持ちばかりではない。公営住宅への入居希望者にも補助があるべきだ」と訴えた。


福島県は「ふるさと住宅移転補助金」による帰還政策も進めているものの、「帰りたくても帰れない」という事情を抱えた人たちもいる。千葉県市川市に避難する南相馬市の男性(70)は妻(67)が人工透析を受けており「できれば戻りたいが、医療面で不十分な状況で戻るという選択は難しい」と明かした。


同県松戸市に避難している南相馬市の女性(50)は、自宅に戻ったところ、除染作業が続いていたという。震災で壊れた自宅は解体中といい、「千葉に住むとしてどうすればいいのか。望みを持って良いのか不安だ」と表情を曇らせた。


千葉県は5〜7月、約300世帯を対象に面談や電話で意向を尋ねた。ただ打ち切りまで半年あることもあり、態度を決めている世帯は少なかったという。県の担当者は「家族で避難し千葉県が生活の拠点になっている人も多い。こちらで仕事を見つけている場合、福島に戻っても仕事が見つかるかどうか不安に思う人もいる」と話す。


交流会を主催した「東日本大震災復興支援松戸・東北交流プロジェクト」の古宮保子代表は「震災から5年が過ぎ避難者の悩みが個別化しており、1人ずつ『カルテ』のようなものが必要だ。住宅支援や生活支援など、民間企業の力も借りて対応できるようにしたい」と話している。

福島県からの自主避難者らが集まって開かれた交流会。
避難者からは新たな家賃補助制度に対する不安や不満の声が上がった
=千葉県松戸市の「黄色いハンカチ」で

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