2015/06/17

「住宅無償」打ち切り 戸惑う道内自主避難者 福島原発事故

2015年6月17日北海道新聞
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/society/society/1-0146374-s.html
「子供たちのことを考えれば、福島に戻る選択肢はない」。
避難先の雇用促進住宅で思いを語る稲守さん=札幌市厚別区

「生活が困窮する」「事実上の帰還強制だ」―。東京電力福島第1原発事故の自主避難者について、福島県は災害救助法に基づく住宅の無償提供を2017年3月末で打ち切る方針を決めた。賠償がわずかな自主避難者にとってほぼ唯一の公的支援であり、道内の避難者からも戸惑いや反発の声が上がる。関係者からは「住宅提供に代わる新たな支援の枠組みづくりが必要だ」との指摘が出ている。

無償提供の打ち切りは内堀雅雄福島県知事が15日、記者会見して表明した。県と道によると、国から避難指示が出ていない地域から避難した自主避難者は昨年末時点で推計約2万5千人、道内には約1200人いる。県が公営住宅や民間アパートなどを公費で借り上げ、「みなし仮設住宅」として無償で提供する。期間は災害救助法に基づき1年ごとに延長されてきた。

「一方的な打ち切りで理由が分からない」。札幌市厚別区の雇用促進住宅で避難者組織「桜会」の代表を務める稲守耕司さん(37)は困惑する。福島県郡山市でガス器具の営業をしていたが、原発事故後、妻(37)と4~9歳の男児3人とともに札幌に移住した。

稲守さんが道産米などの通信販売を手がけ、事故前は専業主婦だった妻も医療事務の仕事で家計を助ける。今は家賃約5万円の自己負担はない。「住宅支援があったからこそ、ここまで来られた。それがなくなれば生活が厳しくなる」と険しい表情を見せる。

避難者は今後、家賃を負担して避難を続けるか、帰郷するかの選択を迫られる。稲守さんは「国や県は事故を終わったものにしようとしている。原発事故の収束が見えず、放射能汚染が続いている福島に子供たちを連れて帰りたいとは思わない」と語気を強めた。

県は独自支援策として、県内に帰還を希望する避難者に引っ越し費用を補助するほか、低所得者に対して家賃の一定期間の補助も検討している。

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