2015/06/20

避難の母「命綱切らないで」 福島県が無償住宅打ち切り方針

2015年6月20日 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015062002000242.html
「ここからも放り出されるのか」と将来の生活不安を語る
自主避難者の二瓶和子さん=東京都練馬区で
 東京電力福島第一原発事故で、被災者が古里にとどまることも、遠くへ避難することも支えられるはずだった。しかし福島県は、災害救助法に基づく自主避難者への住宅の無償提供を、2017年3月で打ち切る方針を決めた。子どもを抱えて首都圏に避難中の母親らは「命綱を切らないで」と悲鳴を上げる。「子ども・被災者支援法」が成立して3年を迎える21日には、支援法を問うシンポジウムが都内である。  (辻渕智之、柏崎智子)

「心中も考えたほどぎりぎりの生活。それなのに、ここからも放り出されるのかな」。二瓶和子さんは嘆く。自主避難し、都内で小学生の娘二人と無償提供のアパートで暮らす。

昨夏、夫が残る福島市の自宅に行った。庭先で放射線量を測ると毎時〇・四二マイクロシーベルトだった。避難が必要と国が判断する基準よりは低い。しかし、国際基準で一般の許容限度とされる毎時〇・二三マイクロシーベルトは上回っていた。

市が除染してくれても、汚染土を入れた袋は自宅の庭か畑に置かれる。こんな状況では「とても帰れない」と感じている。

住宅の無償提供は一年単位で延長されてきた。支援法では、長く住める住宅の確保や仕事のあっせんなど望む地で生活再建するための全面的な支援が期待されたが、具体化していない。

同県いわき市から都内に避難中の三十代女性は、無償提供の元公務員宿舎で四人の子と暮らす。いわき市に残る夫の給料は月三十数万円。夫の生活費十万円、自宅のローン返済十三万円を引くと、余裕はない。

小学生の長女の甲状腺に昨春、小さな嚢胞(のうほう)が見つかった。二次検査の必要はないと言われたが落ち込んだ。「この子たちが放射能で病気になり、後悔するのは嫌。でも住宅支援がなくなれば家賃も払えない。どこでどうやって暮らせますか」

自主避難者は県の推計で約九千世帯、約二万五千人。うち八割は県外に逃れ、災害救助法に基づき「みなし仮設住宅」として提供された民間アパートや公営住宅などに無償で住んできた。県は打ち切りの方針を「帰還や生活再建に向けた新たな施策を進めていくため」と説明。県内の住宅への引っ越し費用や、所得が低い世帯の家賃を支援することなどを検討している。

二十一日のシンポ「やっぱり、支援法でしょ!」は午後一時半から、千代田区の上智大学十二号館五〇二号室で。福島県の親子の生活調査の結果や原発事故のあったチェルノブイリとの比較報告などが行われる。

◆意に沿わぬ帰還強制 人権脅かす
自主避難に詳しい河崎健一郎弁護士の話 意に沿わない帰還の強制は人権を脅かす。無償住宅の提供は継続が必要だ。延長単位は生活の見通しが立つよう5年ほどに長くし、住宅の借り換えも柔軟に認めるべき。福島県外の希望者や地域の健康診断・調査も求められる。

<原発事故子ども・被災者支援法> 福島第一原発事故の被災者の生活や健康を、国が責任を持って守るための理念を定めた。被災者がどこに住む選択をしても、住宅や医療、就業、教育などで必要な支援をするとした。国は既存の政策を適用し方針を決めた。

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