2015年06月19日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/culture/news/20150617-OYT8T50017.html?from=ytop_ymag
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説明演奏をする「影法師」のメンバー。代表作は、ローカル線廃止反対を歌った「今日もあの娘は長井線」、東北が首都圏のゴミ捨て場になっていることへの怒りを歌った「白河以北一山百文」(山形放送提供)を追加 |
山形放送(YBC)のラジオ番組「YBCラジオスペシャル 花は咲けども~ある農村フォークグループの40年~」が、放送関連の賞を総なめにしている。
山形県内でしか放送されなかったこのドキュメンタリー、どんな内容だったのか。
「YBCラジオスペシャル 花は咲けども~ある農村フォークグループの40年~」は、2014年5月31日に放送された49分の番組。山形県長井市を拠点とする4人組のアマチュアフォークグループ「影法師」の40年の活動を振り返りながら、同グループが、2013年に発表したオリジナル曲「花は咲けども」に込めた思いを伝えた。
14年、その年の「日本民間放送連盟賞」のラジオ教養番組部門の優秀賞を受賞、「日本放送文化大賞」でラジオ部門グランプリの候補になった。今年に入ってから、「放送人グランプリ」の優秀賞、「ギャラクシー賞」のラジオ部門大賞、「放送文化基金賞」のラジオ番組部門の最優秀賞を相次いで受賞した。
「歌ありきの番組。影法師さんの歌の力に感服しています」と伊藤和幸ディレクターは話す。
番組のタイトルにもなっている「花は咲けども」は、NHKで放送されている復興支援ソング「花は咲く」に違和感を抱いた影法師が、その「アンサーソング」として作った曲。
花は咲けども 春をよろこぶ 人はなし――
福島の原発事故で避難生活を余儀なくされている人たちの無念を歌っている。
伊藤ディレクターは13年5月、影法師のバンジョー担当で農家の遠藤孝太郎さんからこの曲の構想を聞いて取材を開始。YBCにはラジオもテレビもあるため、同年10月、まずテレビのドキュメンタリー枠「やまがたZIP!」で、遠藤さんに密着した番組を放送。さらに、「テーマが歌や気持ちの揺れ動きで、ラジオにふさわしい」(伊藤清隆プロデューサー)と、ラジオ番組の制作も始めた。
ただ、「善意の歌である『花は咲く』に異議を唱えていいのかという複雑な気持ちがあった」と伊藤ディレクター。さらに、ふるさとの花 恋焦がれて 異郷で果てる 日を待つのか――という「花は咲けども」の3番の歌詞が、「避難生活をしている方を傷付けてしまうのではないかという不安もあった」と明かす。
影法師の側にも、「(原発事故の)当事者ではなく、福島に住んでいない自分たちがこの歌を歌っていいのかという迷いがあった」(遠藤孝太郎さん)というが、「おこがましいけれど、福島の人たちが言えないことを、影法師が代弁できれば」と腹をくくった。
伊藤ディレクターも「東北と中央との昔からの理不尽な関係を、原発事故をきっかけに改めて考えたい。また、今も原発事故と向かい合って生きている人がたくさんいることを、東京の人たちに知ってもらうきっかけになれば」と覚悟を決めて番組を作ったという。
番組では、山形で避難生活を送っている福島の人を訪れ、この歌を聴いてもらっている。その一人が、「福島の人の気持ちを思って歌ってくれている」とつぶやくシーンが感動的だ。
伊藤ディレクターは、「賞をいただくことで、いろいろな人に聴いてもらえる機会が生まれる。それをうれしく思っています」と喜びを語っている。
◇番組は、今後、横浜情報文化センター(横浜市中区)内にある「放送ライブラリー」で保存・公開される予定。「花は咲けども」を収録したCDブックが発売中。
インターネットの動画投稿サイト「YouTube」で、曲の短縮版が聴ける。
(田中誠)
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