http://www.niigata-nippo.co.jp/news/national/20150616187395.html
「命綱」を切らないで―。福島県が東京電力福島第1原発事故による自主避難者の住宅の無償提供を2017年3月で打ち切る方針を決めた15日、本県の借り上げ仮設住宅に自主避難する人からは悲痛な声が上がった。
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「住宅支援がなくなったら子どもを放射線から守ることができなくなる」。いわき市から新潟市に避難する女性(40)は借り上げ仮設の支援打ち切り方針を知り、田んぼのあぜ道で無邪気に遊ぶ2人の子どもを見詰めながら話した。
女性は原発事故後すぐに2人を連れて避難した。福島第1原発から約40キロの所に住んでおり、子どもへの放射線の影響が心配だった。当初は数カ月で帰るつもりだったが、福島で安心して子育てができるかどうか、今も不安が拭えないでいる。
夫は地元に残っているため、二重生活で家計は厳しい。住宅の支援がなくなればさらに苦しくなる。それでも女性は「今は帰ることは考えられない」と話す。健康被害の不安が解消されないことや、原発の廃炉作業のめどが立たないことが帰還を阻む。
借り上げ仮設の打ち切りと同時に帰還を促す方針に、「原発事故で変わってしまった人生を新しく組み立てようとしているのに、戻そうとする。私たちにも今の生活があるのに…」と憤る。「ふるさとに帰りたい気持ちはずっとある。だから県外にいても福島県民として県に守ってほしい」と訴えた。
借り上げ仮設の入居期限は毎年、1年ずつ延長が繰り返されてきた。いわき市から新潟市に避難する女性(61)は福島県や復興庁の職員と話す機会があったときに長期の延長を求めたことがある。打ち切り方針に、「個人の力は弱いのね」と声を落とし、「覚悟はしていたけれど、借り上げがなくなれば帰らなければいけなくなる。私たちにとっての命綱を切らないでほしい」と静かに話した。
川内村から長岡市に自主避難する男性(67)は「何の説明もなく決めるのはおかしい」と、一方的な決め方に不満を示す。「子どもの成長を考えて自主避難を選択した人の意向を考え、支援を打ち切らないでほしい」と強調した。
いわき市から子どもと避難する女性。 借り上げ仮設のアパートが見えるあぜ道で、子どもと花を摘む。 「福島ではこんな遊びはできない」と話す=15日、新潟市 |
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