2015年06月27日 毎日新聞地方版http://mainichi.jp/area/gunma/news/20150627ddlk10040083000c.html
東京電力福島第1原発事故の避難者が暮らす「みなし仮設住宅」を巡り、福島県が自主避難者への無償提供を打ち切る方針を示している。県内の自主避難者からは「生活できなくなる」と悲痛な声が漏れ、「支援を受けられる強制避難者との溝がさらに深まってしまうのでは」との懸念も聞こえてくる。【尾崎修二】
◇「強制」との溝に懸念も
福島県いわき市から県内に避難し、市営アパートの「みなし仮設」で暮らす女性(43)は、保育園と小中学生の子供3人を1人で育てる。保険外交員の仕事と、市からの児童扶養手当を加え、何とかやりくりしているのが現状だ。
女性は震災直後、栃木や群馬を転々とし、いったんいわきに。12年1月に群馬に移住したが夫はいわきに残り、12年秋に離婚した。今回の打ち切り決定について「自主避難者が受けている唯一の支援なのに」と落胆する。打ち切りは自主避難者の帰宅を促すのが狙いの一つとされるが、「職場にも慣れて友達もできた。戻るにしても家を探さないといけない。行政は子育て世帯を受け入れる姿勢をもっと見せてほしい」と訴える。
福島県中通りから避難した別の女性(52)は、これまで多くの知人が強制避難者への恨みを口にするのを耳にしてきた。「国が決めた線引きのせいで、近くの町の人が毎月10万円をもらう様子を見れば、どうしてもうらやましくなる。みなし仮設の支援打ち切りは、強制避難者と自主避難者との溝を広げてしまうのでは」と心配する。
県内の避難者が国と東電に損害賠償を求めている集団訴訟でも、多くの自主避難者が原告に入る。弁護団の関夕三郎事務局長は「自主避難者には、子供のために仕事を辞めたり離れて暮らしたりする人も多いのに賠償は手薄。『福島の人は多額の賠償をもらっている』と誤解されており、決定は残酷だ」と話す。
26日は集団訴訟の口頭弁論が前橋地裁(原道子裁判長)であり、原告11人が本人尋問に立った。ある自主避難者の男性は「故郷を離れた精神的苦痛は自主も強制も同じだ」と述べた。
県危機管理室によると、6月3日現在、1289人が県内で避難生活を送っている。自主、強制避難者の割合は集計していない。
福島県は15日、みなし仮設住宅の自主避難者への無償提供を17年3月末で打ち切る方針を決定。強制避難者は追加延長を個別に判断するという。強制避難者には東電から毎月10万円が支払われているが、自主避難者は行政による住宅提供がほぼ唯一の支援となっている。
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