2015/05/13

5/23にイベント 神奈川/福島に生きる 不安と希望 写真家 大石芳野さんが追った


2015年5月13日 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20150513/CK2015051302000142.html


東日本大震災後の福島に通い続けている写真家、大石芳野さん(71)=東京都武蔵野市=の写真展が12日、川崎市川崎区の東海道かわさき宿交流館で始まった。テーマは「福島 土と生きる」。東京電力福島第一原発の事故で故郷を奪われ、仕事をなくし、それでも懸命に生きようとする人々の姿を丹念に追った。 

大石さんはコソボなど戦争の傷痕が残る地を歩いてきた。震災二カ月後の二〇一一年五月に福島県飯舘村に入った時、原発事故の影響で人々が避難し静まり返った村が戦地と重なった。「家も畑もそのままなのに人がいない。放射能という敵に住民が土地を奪われたと感じた」。それから四年間、毎月のように被災地に通い、シャッターを切り続けた。
 
会場にはそうして撮った四十点余りの作品が紹介され、撮影対象となった福島の人々の言葉も添えられている。ある男性が草が伸び放題の田を背景に立ち尽くす写真の近くには「生きる原点の田園を耕せないのは悲しくて情けなくて。子も孫も帰ってこられない」という男性の嘆きの言葉がある。大石さんは「福島の人々は自然や花を愛していた。その原点である土を汚された」と憤る。
 
ほかにも、カメラをじっと見据えて「将来、結婚や出産が心配」と語る女子高校生や、「原発さえなければ」と書き残して弟が自殺した牧場の堆肥小屋を訪れる姉の姿など、癒えることのない不安や悲しみを写真に込めた。
 
家族の成長を追った作品もある。結婚して一週間後に被災した若い夫妻。三年前の写真は妻が大きなおなかを抱え「避難を繰り返して、希望と不安がないまぜ」と語る。だが今年撮った写真は女の子が赤ん坊の隣でほほ笑む。家族が増えていた。大石さんは「新しい命が生まれて前に進んでいるのを見て胸がいっぱいになった」と目を細める。
 
「前向きに生きようとする人々のたくましさを見てほしい。その裏に隠れた事故の重みを自分の人生に引きつけて感じてもらえたら」と大石さん。原発事故を風化させないよう今後も足を運び続けるという。
 
入場無料で六月十四日まで。二十三日午後三時から大石さんの講演会、三十日午後三時から大石さんと学芸員の対談が開かれる。問い合わせは、東海道かわさき宿交流館=電044(280)7321=へ。



東日本大震災後の福島の人々を追った大石さんの写真展




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