2015/05/15
福島/「あと2年」戸惑う住民 避難解除目標、自民が提示
2015年5月15日 朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/DA3S11754211.html?ref=nmail_20150515mo&ref=pcviewpage
自民党の東日本大震災復興加速化本部は14日、福島県の原発事故の被災地について、避難指示を解除する目標時期を打ち出した。解除の実績はまだ1%に満たないが、2016年度までに避難者の約70%が住んでいた避難指示解除準備区域と居住制限区域のすべてに広げる。だが、除染も終わっていない。高い目標に、避難者は戸惑う。
■納得できず
住民が散り散りに避難を強いられた原発事故からすでに4年以上がたつ。荒れ果てた生活インフラを整え直し、放射線量を気にせず暮らせる地域社会を作り直すのは容易ではない。
富岡町の居住制限区域内にある自宅から、郡山市の仮設住宅に避難している女性(68)は納得できない。「店も病院も住む家もないところで、どうやって生活しろというのか」
元の自宅は震災の被害を受け、長引く避難中に床も抜けて解体を決めた。同居する長男(44)は持病のため車いすで生活し、通院が欠かせない。「住み慣れた所に戻りたいが、あと2年で、環境が整うとは思えない。言葉だけで帰還と叫ばれても、むごいだけだ」。女性は声を震わせた。
■すでに移住
人口の9割以上が住んでいた地域が避難指示解除準備区域と居住制限区域になった飯舘村。村は「遅くとも17年3月」までに両区域の避難指示の解除を目指す。だが、帰還をあきらめ、避難先などへの移住を選んだ人たちも多い。
福島市内の仮設住宅に避難する菅野光(みつ)さん(78)は、村の隣の川俣町内で中古住宅を探す。だが、避難者らの住宅需要は高く、手頃な物件がなかなか見つからないという。
「(避難者を)待たせすぎだ。(解除時期を)早く言ってくれれば、もっと早いうちから移住を決めて、真剣に家探しができたのに」と話す。
■村長は評価
一方で、菅野典雄村長は村の帰還の目標を後押しする今回の提言(骨子案)を評価する。「住民が村に戻るか、戻らないかを考えるきっかけを示した。良い判断だったのではないか」
提言では、線量の高い帰還困難区域の避難指示解除については「引き続き地元とともに検討する」とし、具体的な目標は示されないままだった。
東京電力福島第一原発が立地し、人口の9割超が同区域にあたる大熊町の元職員、鈴木久友さん(62)は「帰りたいと思っている人にとっては、いまだ見通しも立たず中ぶらりんの状態。せめて除染を実施する時期のメドだけでも示してほしい」と語った。
■賠償に代わる支援、焦点
「早期の解除は、政府として与党として当然」。党復興加速化本部事務局長の井上信治氏は14日、避難指示の解除目標についてそう語った。「事故後6年」とした理由は「除染や産業再生(の進み具合)を勘案して」と説明した。
党の復興提言は今回で5回目。これまでも政府の方針に反映されてきた。今回の提言では、原発事故の避難が長引き「弊害」があることに触れた。
復興庁によると、国が避難指示を解かないと、区域内の作業を敬遠する建設業者があり「住宅修繕を含めインフラ復旧が進まない」(幹部)。インフラ復旧は、「放射線量が年20ミリシーベルト以下に低減」「地元との十分な協議」に並ぶ解除条件の一つだ。
また、東京電力の慰謝料(損害賠償)が、避難指示の解除から1年をめどに打ち切られるという現行ルールも、避難者が解除に後ろ向きになる一因とされる。
自民党は提言で、賠償に代わる支援策をつくるよう国に求めた。
ただ、国の計画では除染が終わるのは16年度。党は除染しなくても線量が自然に下がる状況を見越し「除染が終わらなければ帰還できないわけではない」(井上氏)との認識を示した。
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