2015年05月22日 毎日新聞
http://mainichi.jp/shimen/news/20150522ddm001040168000c.html
自民党東日本大震災復興加速化本部(額賀福志郎本部長)は21日、復興加速化のための第5次提言案をまとめた。帰還困難区域(年間積算放射線量50ミリシーベルト超)を除く避難指示区域については、避難指示解除の時期にかかわらず、避難者への精神的賠償の支払いを2018年3月までとすることなどが柱。週明けに与党間で合意し、今月末に政府に提出する。
東京電力福島第1原発事故に関する精神的賠償は現在、避難指示区域の住民1人当たり月10万円。提言では、除染やインフラなどの環境整備を進め、遅くとも17年3月に避難指示を解除すると明記。「(支払期間は)避難指示解除後1年をめど」とする国の原子力損害賠償紛争審査会の指針を踏まえ、1人が受け取る精神的賠償の総額は事故後7年分に当たる一律840万円になる。
対象住民は「避難指示解除準備区域」(年間積算放射線量20ミリシーベルト以下)、「居住制限区域」(同20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下)の住民計約5万5000人に加え、避難指示が昨年4、10月に解除された福島県田村市都路(みやこじ)地区と同県川内村東部地区も含まれる。また、早期に避難指示が解除された旧緊急時避難準備区域は対象から外した。帰還困難区域の精神的賠償はすでに1人一律1450万円が支払われることになっている。
避難指示解除には住民の合意が必要だ。精神的賠償の支払期間を明確にしたことで早期の住民合意につながれば、「避難者の帰還が進み、人口が増えれば復興が促進される」との期待がある。額賀氏は会合で「避難指示解除をきっかけとして避難している人がふるさとに帰って来る道を切り開きたい」と強調した。
しかし、川内村東部地区で避難先から帰還したのは今年1月現在で人口の10・5%。田村市都路地区でも昨年11月現在39・1%にとどまり、放射線や雇用環境への不安などから帰還が進んでいない。避難指示の早期解除が実現したとしても避難者の帰還が進むかは未知数だ。
提言ではほかに、避難区域の商工業者への営業賠償や避難区域外の商工業者の風評被害賠償について16年度まで延長するよう求めた。国が2年間、事業者の営業再開などを集中的に支援し、官民合同の新しい支援組織を設立することも盛り込んだ。これらの賠償については終了時期を15年2月から1年延長する案が検討されたものの反発が強く、安倍晋三首相が再検討を指示した経緯がある。
ただ、17年度以降については「個別の事情に応じて対応する」とするにとどまっている。
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◇第5次提言案 骨子
<原子力事故災害地域の再生>
・避難指示解除準備区域、居住制限区域は遅くとも事故から6年後(2017年3月)までに避難指示を解除
・精神的損害賠償は、早期に避難指示を解除した場合も、事故から6年後に解除する場合と同等となるよう、国が東京電力に指導
・15、16年度で民間事業者が自立できるよう、国、県、民間が一体となり集中的に支援し、営業損害、風評被害への賠償について適切に対応するよう、国が東電に指導。その後は個別の事情を踏まえて適切に対応するよう、国が東電を指導
<地震・津波被災地域の早期復興>
・高台移転事業など住宅再建支援策の着実な推進
<共通課題>
・復興費用は全額国費負担を続けるが、必要性や内容の見直しが求められる事業については、被災自治体が一部負担
・復興費用の財源は国が保有する資産の有効活用など税外収入で確保
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