田植え表情晴れず…南相馬作付け制限解除
2015年05月19日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/local/fukushima/news/20150518-OYTNT50349.html
東京電力福島第一原発事故の避難指示区域外で今年からコメの作付け制限が解除された南相馬市で、田植えが行われている。ただ、米価安や風評被害の懸念などから、主食用米ではなく、国の助成金で一定の収入が見込める飼料用米が作付面積の約8割を占める。5年ぶりに営農を再開する農家が多いが、「やりがいがない」と複雑な思いを抱える。
「採算が取れるか分からなくて不安だよ」。9日午後、農地除染を終えた南相馬市原町区石神の水田で、田植え機に乗る農家の牛渡隆夫さん(70)は表情を曇らせた。
これまで営農を自粛する農家に東電から支払われていた賠償は打ち切りが決まり、5年ぶりに本格的な作付けをすることにした。しかし、「資材は5年前より高くなっているのに、主食用米は安い」ため、約6ヘクタールの水田に植えるのはすべて家畜に与える飼料用米の苗だ。
放射性物質の不安を訴える農家もいる。同じく5年ぶりにコメ作りを再開する同市鹿島区小池の小沢清美さん(60)は「セシウムが検出されるかもしれないと考えると、主食用米は作れない」と話す。飼料用米も全袋検査が行われるが、近隣の農家から託された水田を含め、約24ヘクタールで飼料用米を作るつもりだ。
小沢さんは「原発事故前はおいしいコメを作ろうと頑張ってきたが、今は全くやりがいを感じない。農地が荒れないよう守るためだけにやっているようなものだ」とため息をついた。
市によると、避難指示区域外で今年営農する農家は昨年の78戸から229戸に増え、作付面積は約7倍の約700ヘクタール(4月23日時点)になる見通しだ。このうち飼料用米は約550ヘクタールに上る。地元JAは飼料用米を中心に市内1500ヘクタールの作付けを目指していたが、除染の遅れもあり農家の生産意欲は高まっていない。
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