2015年06月15日高知新聞
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政府は東京電力福島第1原発事故に伴う福島の復興指針を改定した。
「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」の避難指示を、2016年度末までに解除する。商工業者らの事業再建に向けた支援も、16年度までの2年間で集中的に実施する。
古里に戻りたいと思う人が一日でも早く戻れるよう、目標時期を定めることには意義もあろう。半面、放射線による健康被害や生活環境などへの不安は根強い。「期限ありき」で帰還を進めるのではなく、被害の実態に応じた丁寧な対応が求められる。
政府による避難指示区域は年間放射線量の高い順に帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域の三つある。このうち居住制限、避難指示解除準備の2区域の人口は計約5万5千人。現在も県内外に避難している県民11万3千人の約半分だ。
その避難指示が解除され住民の帰還が進めば復興の大きな一歩となろう。
しかし、それは容易ではない。
鍵を握る除染は住宅や道路など生活圏の周辺と森林の一部で行われているが、除染後も政府が年間限度に掲げる1ミリシーベルトを上回る地域は多い。健康面の不安と長く向き合っていかねばならない恐れがある。
インフラとともに商圏も復活しないと、帰還しても暮らしていけない。原発事故でばらばらになったコミュニティーの再生も必要だ。これらがうまくいかず、既に避難指示が解除された地域でも帰還は進んでいない。
復興指針が被災者への「賠償」から「自立支援」へ、方針転換を打ち出していることへの懸念も強い。
東電は避難指示区域の商工業者への営業損害賠償は16年度分まで、居住制限、避難指示解除準備の2区域の住民に対する精神的損害賠償は17年度末まで、それぞれ支払うとしている。
だが被災者の健康状態や、置かれた状況は千差万別だ。福島県産の食品への風評被害は今もある。政府の避難指示解除の目標時期と軌を一にしたように、賠償を打ち切ることへの不満や不信はあるだろう。
被災自治体や住民が将来的に自立できるようにするための支援は、むろん必要だ。それは政府が一律に期限を区切ったり、強く促したりして実現できるものではない。求められるのは被災者一人一人に寄り添った、きめ細かな息の長いサポートである。
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