2015/06/09

原発事故4年 みなし仮設自主避難分 家賃、住宅予算の3割未満 打ち切り案「帰還促進狙い」

2015年06月09日 毎日新聞 東京朝刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20150609ddm041040091000c.html

東京電力福島第1原発事故の避難者に無償提供されている応急仮設住宅のうち、2016年度末での打ち切り案が出ている自主避難者分の「みなし仮設」の今年度の家賃総額が最大でも80億9000万円であることが分かった。強制避難者分を含めた応急仮設全体の予算である福島県の救助費288億円余のうち、自主避難者分は3割未満。避難者に詳しい識者は「費用負担は大きくないのに打ち切り案が出るのは、自主避難者の判断を尊重せず半ば強制的に帰還を進めたいからではないか」と批判している。【日野行介】

福島県内の避難指示区域外からの避難者、いわゆる自主避難者については、同県が12年11月まで県内の応急仮設住宅への入居を認めなかったこともあり、その多くは県外に逃れ、避難先の都道府県の公営住宅や民間賃貸住宅を利用したみなし仮設に入っている。

福島県によると、応急仮設の予算である救助費は、土木部と生活環境部(現在は企画調整部に移管)が、それぞれ県内分207億3200万円、県外分80億9000万円を今年度予算に計上。県外分には強制避難者の分も含まれるが分類できておらず、担当者は「強制避難者は不動産賠償による自宅購入も進んでおり、(県外分の)多くは自主避難者だろう」と話す。

一方、12年11月に受け入れを始めた県内での自主避難者のみなし仮設は約300戸あるが、この家賃は県外分に含まれているという。このため県外分80億9000万円に自主避難者分の家賃は全て含まれることになる。

内閣府によると、福島県内のみなし仮設は今年4月1日時点で1万8742戸。県によると、県外のみなし仮設は約1万戸だが、いずれも強制避難者を含む。国や県はいまも、自主避難者に提供されたみなし仮設の戸数や家賃総額を具体的に明らかにしていない。

みなし仮設を含む応急仮設の現在の提供期限は16年3月末。福島県が内閣府と協議して近く延長の可否を判断するが、17年3月まで延長してそれ以降は自主避難者分を打ち切る案が出ている。みなし仮設の家賃は、県予算への計上分を含めて実質的に国が全額負担しているが、東電が自主避難者分の支払いに難色を示しているため、国はこれまで東電に一切請求していない。

同じ復興予算では、今年度の除染関連費は前年度比1335億円増の6439億円。環境省が13年12月に公表した試算は、除染費とそれに伴う中間貯蔵施設の整備費の総額を3・6兆円としている。




避難者漂流:原発事故4年 みなし仮設自主避難分 家賃、住宅予算の3割未満 打ち切り案「帰還促進狙い」 識者の話

◇費用少額、継続を 避難者の実態に詳しい福島大の今井照(あきら)教授(自治体政策)の話

除染全般を否定するものではないが、除染にかかる巨費を考えると、80億円は少額で、打ち切りを検討する理由が費用負担ではなく、帰還の促進であることが分かる。国や県は、打ち切れば自主避難者が福島に戻ると思っているかもしれないが、多くの人たちは戻らず、生活困窮に追い込まれるだけだろう。被災者の生活再建ができるまで、打ち切るべきではない。

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