2015年07月02日 毎日新聞 地方版http://mainichi.jp/area/fukushima/news/20150702ddlk07040244000c.html
◇「良くも悪くも戻るきっかけ」/「廃炉も完了してないのに」
原発事故の自主避難者に対し災害救助法に基づく避難先の住宅の無償提供を2017年3月末で打ち切ることについて、県は1日、新潟市で開かれた自主避難者対象の説明会で打ち切り後の支援策などを説明した。避難者からは「帰還ありきではなく、避難を継続するための施策も早急に提示してほしい」「原発事故が収束していない段階では戻れない」と不安の声が上がった。
説明会は復興庁の情報支援事業の一環で、新潟県内の避難者を支援する一般社団法人「FLIP(エフエルアイピー)」が開催。県の担当者は打ち切りについて「除染やインフラ整備が進み、多くの人が福島県で生活している。応急救助の枠組みによる支援継続は難しい」と理解を求めた。打ち切り後の支援策は、県内への引っ越し費用補助は「今年度中に実施」とする一方、避難先の住宅の家賃補助については「詳細は検討中」と繰り返し、会場から「戻るなら支援するとしか聞こえない」と反発の声が上がった。
説明を聞いた伊達市の女性(39)は「避難を続けたい人への支援は具体的に出てこなかった」とため息をついた。11年8月に長男(4)を連れて避難し、次男(2)は新潟市で産んだ。夫は伊達市の賃貸アパートで暮らす。打ち切り後、自己負担が1万円を超えるようなら2世帯分の家賃をまかなうのは難しいと考えている。
「低線量被ばくの健康への影響が明確ではない以上、子どもが18歳になるまでは戻りたくない」と思う。ただ、震災から4年たち、福島に残る夫や実家の両親と放射線に対する考え方で溝が深まりつつある。夫や両親は長男の小学校進学を区切りに福島県に戻るべきだと考え、打ち切り時期はちょうど長男の進学と重なる。「いつまでも支援してもらえると思っていない。帰れってことかな」とこわ張った表情で話した。
伊達市から避難する別の女性(25)も「良くも悪くも戻るきっかけになりそう」と話す。一緒に避難した夫の再就職先はアルバイトで、無償提供を受けやっと生活している状況だ。避難後に生まれた長女は1歳。放射線への不安は消えないが、打ち切りに加え、県内に帰る人には引っ越し費用の補助が出ると聞くと「避難を諦める気持ちになる」と言う。郡山市から一家で避難する高島護さん(45)は「福島第1原発の廃炉も完了していない段階で戻ることは考えられない。県は避難を継続したいという声をしっかり施策に盛り込んでほしい」と訴えた。
県避難者支援課の菊池輝夫副課長は「放射線に関してはさまざまな考えがある。避難者の事情を考慮して支援策を決めていきたい」と語った。FLIPの村上岳志代表は「帰還に不安を抱く人たちがいる以上、帰還促進だけでは不十分。県と国は連携して帰還と避難継続を両立させてほしい」と話した。【喜浦遊】
0 件のコメント:
コメントを投稿