2015年07月01日 常陽新聞
http://joyonews.jp/smart/?p=8184
取手市の市民グループ「子どもの健康を守る市民ネットワーク」(黒沢仁美代表)が、福島第1原発事故による県内の子どもの健康影響について監視を続けている。小学1年生と中学1年生を対象に毎年春、小中学校で実施されている学校検診=メモ参照=のうち心臓検診結果について、県内全市町村に開示請求し結果を集計。事故前と事故後の変化のほか、放射性セシウムの汚染が比較的高かった市町村と低かった市町村を比較などしている。
検診項目のうち、2006年から14年までの心臓検診結果について、県全体のほか、市町村別に集計結果をまとめ、6月30日、生活クラブ生協まち取手(根岸裕美子代表)が取手市内で開いた「忘れちゃいけない3・11」で報告した。
同会の集計によると県全体では、心電図に異常があり精密検査が必要と診断されたり、精密検査の結果、疾病や異常があると診断された児童・生徒の割合は、原発事故翌年の12年に上昇し、13年は減少した。14年は前年より上昇したが事故前とほぼ同じ水準にあるという。市町村別では、放射性セシウムの汚染が比較的高く放射性物質汚染状況調査地域に指定されている取手市や阿見町で、他市町村に比べ増加傾向にあった。
この結果について小児科医で「原発の危険から子どもを守る北陸医師の会」の吉田均医師(石川県)は「症例数が少ないので(茨城県全体で)本当に増えているのか、あるいは増減しているのか、たまたまの偶然なのか正確には判定できない」としながら「判定できないからといって『放射線の影響はない』と断定することもできない。慎重な対応が求められる」としている。さらに放射線量が高い市町村で心電図異常などが増加傾向にあることについて「放射線の影響である可能性を否定できないので、十分な注意が必要と思われる」としている。
「検診体制の充実を」
同ネットワークはさらに、取手市で開示された心臓検診の精密検査の結果について、症例別に集計したところ、QTと呼ばれる心電図の波形が正常に比べて長くなる異常症状の「QT延長症候群」と診断された市内の小中学生が、事故前の08~10年は年間1~2人だったのに対し、事故後の11~14年は3~6人と事故前より増えていることがわかった。
吉田均医師は「放射性セシウムは理論的にもQTを延長させる可能性があるので、事故の影響が危ぐされる」としている。
同ネットワークは、福島第1原発事故翌年の12年、母親同士の会合の席で「子どもたちの心電図異常が増えている」などの話題が出たことをきっかけに調査を始め、その後毎年、開示請求と集計を実施している。
調査結果について黒沢代表は「事故後の12年に異常などが増え、13年以降は落ち着いてきたように見えるのはうれしいが、原因は分からないにしても今後も推移を見守っていく必要がある。子どもの検診体制を充実してほしい」と話している。
メモ
学校検診 学校保健安全法に基づいて文科省が毎年実施している調査で、身長、体重、視力、聴力、栄養状態、歯などを調査する健康診断のほか、小学1年、中学1年、高校1年を対象に実施する心臓病検診がある。心臓病検診の1次検査で異常があるとされた児童・生徒は、病院で2次検査となる精密検査や治療を受ける。「子どもの健康を守る市民ネットワーク」はこれらの検診のうち、心臓検診の検査結果を毎年、各市町村に開示請求し、原発事故前と事故後の変化の監視を続けている。
報告会「忘れちゃいけない3・11」で心臓検診結果を発表する 「子どもの健康を守る市民ネットワーク」の黒沢仁美代表(中央左) =6月30日、取手市東の市福祉会館 |
【茨城】小中学生心臓検診 要精密検査 再び増加傾向
2015年7月2日 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/20150702/CK2015070202000170.html
東京電力福島第一原発事故が児童・生徒の健康に与える影響を調べている取手、牛久市民らでつくる市民団体「子どもの健康を守る市民ネットワーク」は、県内の小中学生を対象にした二〇一四年度の心臓検診で、要精密検査、要管理と診断された数が再び増加傾向になったと発表した。黒沢仁美代表は「増加に転じたのは、(文部科学省の)放射線量モニタリングマップで比較的線量が高いとされた地域。原発事故との関連は不明だが、否定はできない」としている。
市民ネットワークは、原発事故後の二〇一二年度から継続的に調査を実施。県内全四十四市町村の教育委員会のうち、小一、中一の「就学児の健康診断」の結果を公開している三十七市町村教委のデータを入手し、分析した結果を取手市内で開いた集会で発表した。
発表によると、心臓検診一次検査の結果、一三年度より、精密検査が必要との診断が増えたのは十九教委。精密検査の結果、心臓の疾患や異常で要管理とされた数の増加は十七教委だった。原発事故後、比較的放射線量が高いとされた県南地区が、要精密検査で九教委、要管理で八教委と、増加数の半数ほどを占めている。要精密検査、要管理は一二年度に増加し、一三年度には減少していたが、再び増加に転じた形だ。
「原発の危険から子どもを守る北陸医師の会」の吉田均医師は「線量の高い地区で、心電図異常が多いという傾向はある」としている。 (坂入基之)
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