2015/07/03

故郷は帰れる環境ではない――東電原発事故避難者ら会見

2015年7月3日 オルタナhttp://www.alterna.co.jp/15448
 
国は東電原発事故で生じた避難者への支援を打ち切り、帰還を促す考えだ。避難者は今なお12万人に上るとされる中、原子力災害対策本部は6月、「居住制限地域」および「避難解除準備地域」を2017年3月までに解除する方針を示した。これに歩調を合わせる形で福島県も、自主的避難者を対象にした借り上げによる無償住宅供与を17年3月に終える。「帰還の強要」に抗議する避難者らが2日、都内で会見した。
(オルタナ編集委員=斉藤円華)

会見で発言した東電原発事故による避難者=2日、都内で
■避難者の大半「戻らない」
復興庁が3月に発表した避難区域の住民に対する意向調査結果では、避難者の約半数が「戻らない」と答え、「まだ判断がつかない」という回答も3割近い。「戻りたい」と答えた割合は、最も多い浪江町でも17.6%にとどまる。

会見はNGO「FoE Japan」が主催。「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワークの吉田由布子事務局長は、福島とチェルノブイリとにおける原発事故後の政策を比較した。UNSCEAR(国連科学委員会)報告を主とした被災者数では、どちらも700万人を超えるという。

また、チェルノブイリ事故では年間被ばく線量が5ミリシーベルト(mSv)以上での移住が義務付けられるが、日本では同20mSv以下での居住を認める。そのため、国が予定する避難解除により、住民が年間に受ける線量は放射線作業従事者の年平均被ばく線量よりも高くなることが予想される。「放射線作業従事者は、被ばくをできるだけ低く抑えるよう管理される。しかし農林業で働く人などの場合、誰にも管理されずに放ったらかしにされかねない」(吉田氏)
 

■帰還の強要は人権侵害■
飯館村から避難中の長谷川健一さんは「安心して戻れる環境が整ってから帰還するのはごくごく当たり前のことだ」と述べ、「除染が終わらない内から(国は)『避難解除する』と言っている」と不信感をあらわにした。

「住宅地の除染だけで、(放射性物質による汚染物を詰めた)フレコンバッグがすでに山積みになっている。さらに農地除染も行えば、黒いフレコンバッグの山がとてつもなく生じる。これらを中間貯蔵施設に移すメドも立たない中で帰還が行われようとしている」(長谷川さん)

田村市都路地区から避難した渡辺ミヨ子さんは「国は命とは違うものを守っている気がしてならない。国は子どもの甲状腺がんも『放射線の影響は考えにくい』と説明しているが、それって本当なのかと思う」と訴えた。

「避難者の方たちの話を聞いて、大変恐ろしい残酷なことがこの国で起きようとしている、と改めて実感した」と話したのは、人権NPO「ヒューマン・ライツ・ナウ」の伊藤和子事務局長だ。
伊藤氏は「政府が避難地域の指定を解除し、支援を打ち切って避難者に帰還を強要する。これは、安全でない場所、健康が保たれない場所、汚染されている場所に強制的に人を押し戻す政策で、重大な人権侵害だ」と述べ、国の方針を批判した。

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